論文概要
パリ協定の気候変動目標を達成するためには、肉の消費を減らすことが必要である。食肉消費を削減するための取り組みでは、世界で最も多く肉を食べている男性消費者をターゲットにしなければならないが、男性は肉の摂取量を減らしたがらないことが多い。その背景には男は肉を食べるべきだという支配的な男性イデオロギーがあり、その期待に従わなければならないというプレッシャーが働いている部分もある(男らしさのジレンマ)。
本研究では、理論的な知見を構築しつつ、介入手段を策定するうえで正確な情報を提供するために、食肉消費に関連する心理社会的指標20項目に基づいて、男性消費者の中に潜在的に存在するサブグループの特定を試みた。オーストラリアと英国において、男性と自認する参加者575名を対象とした潜在プロファイル分析を行った結果、上記の指標のスコア・自己報告による肉の消費量・肉の摂取量を減らす意欲において明確に異なる3つの潜在的サブグループが明らかとなった。すなわち、「抵抗型」の消費者は最も多くの肉を食べ、肉の消費を減らす意欲は非常に弱い。また、「アンビバレント型」の消費者における肉の消費はそれより少ないか中等度で、減らす意欲はやや弱い。「回避型」の消費者では肉の消費量は極めて少なく、減らす意欲は非常に強い。
これらの結果から、食肉削減のためにこれまで試みられた介入策が成功しなかったのは、男性消費者の中に含まれる潜在的に異なるグループにターゲットと絞らなかったためである可能性がある。男性の食肉消費を減らす取り組みでは、男女間の違いではなく、男性人口の中に存在する違いにさらに焦点を当てる必要があるだろう。
Lauren Camilleri, Peter Richard Gill, Jessica Scarfo, Andrew Jago
2023/05/13
Resolving the masculinity dilemma: Identifying subtypes of male meat consumers with latent profile analysis