論文概要
- 栄養に対する需要を確保するために、動物性タンパク質の大量生産が必要とされている
- 生後早期からの高生産性を目的とした遺伝学的な選別と管理は、畜産動物にとって大きな負担となる
- 畜産動物の福祉は、高い生産性に伴う強度の代謝ストレスによって損なわれている
- 代謝ストレスは、動物の身体の構造と機能における不均衡に起因している
- 生産性の高い畜産動物は、本来の解剖学的・生理学的な限界を超えている
このレビューの目的は、高い生産性を得るために畜産動物の身体に人工的に導入された解剖学的・生理学的変化など、動物の視点からはほとんど取り上げられることのない福祉の諸側面について啓発することである。このため本稿では、生産性の高い畜産動物において、身体の構造的・機能的な能力と、工場畜産で動物性タンパク質を得るための遺伝子操作との間に不均衡が進んでいるということを主な作業仮説とする。
このような不均衡は、給餌や管理の方法を変えても代償することは不可能であり、その結果として、潜行性に発症する代謝障害や軽度の全身性炎症、さらに最終段階としての生産病*が生産寿命の全体を通じて進行することで畜産動物の福祉に悪影響を及ぼすことになる。レビューでは、文献から得られた科学的根拠に基づいて、牛乳・肉・胎仔・卵を生産するために最も重要な畜産動物であるブロイラー・産卵鶏・母豚・子豚・乳牛・雄牛・子牛における不均衡状態について議論する。
結論としては、遺伝子操作や管理上の圧力によって、ほとんどの畜産動物において生理的な限界をすでに超えていることは明らかであり、畜産動物のアニマルウェルフェアの諸問題は、動物を中心とした視点から検討する必要がある。このように動物を中心としたアニマルウェルフェアの取り組みでは、倫理的なステップとして、動物の身体の解剖学的・生理学的機能への負荷の大きさに制限を定める必要がある。これによって、より持続可能で効率的な農畜産物の生産が可能となり、動物由来の健康的なタンパク質を栄養源として世界で利用できるようになるかもしれない。
*管理慣行や高い生産レベルが原因となって動物に起こる疾病で、代謝性・栄養性・感染性の疾患が含まれる。
K. Huber
2024/08/19
Review: Welfare in farm animals from an animal-centred point of view