論文概要
多くの人は動物に危害を加えることを避けたいと望んでいるが、ほとんどの人は肉を食べている。理論的には、こうした「肉のパラドックス」は認知的不協和の一種であるが、アニマルウェルフェアと環境に対して及ぼす悪影響は重大である。しかし、こうした状況にもかかわらず、肉のパラドックスに関する研究は乏しい。
この構造化文献レビューでは、2020年5月までの一次資料を調査し、肉のパラドックスが確かに存在することを明らかにし、さらに独自に実施したレビューにおいて、このパラドックスについて知られているすべての誘因(肉の材料となった動物について知ることなど)、パラドックスを克服するために知られているすべての戦略(食べた動物のことを考えないようにすることなど)、さらに性別・職業・年齢・食事の好み・文化や宗教などで異なるさまざまな人々がどのような戦略を用いてパラドックスを克服しているかについて検証する。
例えば、動物に対する道徳不活性化*に関して、人口統計学的・心理学的要因の中でも特に、(菜食・雑食などの)食習慣に関するアイデンティティ、食習慣を遵守すること、肉を食べる頻度などがどのような影響を及ぼしているかを初めて明らかにする。全体として本稿は、肉のパラドックスと社会心理学研究に関して広範な理論的意義を有し、また食肉を削減する政策に資する実践的な知見を提供するものである。
* 道徳的な基準に反する行動を正当化したり、葛藤や罪悪感を回避したりするために、認知の歪みや思考の歪みを利用する心理的なプロセス
Sarah Gradidge, Magdalena Zawisza, Annelie J. Harvey, Daragh T. McDermott
2021/09/23
A structured literature review of the meat paradox