論文概要
人々の多くは肉を習慣的に食べているが、それと同時に自分が動物好きであると考えている。このような状態は認知的不協和につながるはずであり、葛藤を引き起こす原因となるはずである。こうした状況に関して、なぜ肉を食べるのをやめたり、動物性食品を完全に避ける人がいる一方で、そうでない人がいるのかを理解することが重要となる。これまでの研究では、ジェンダーや自己調節メカニズムが重要な要因であることが示されているが、その基底にある心理的プロセスについてはさらなる検証が必要である。
本研究では、ヴィーガン・ベジタリアン・雑食の参加者3259名がオンラインアンケートにおいて、食生活・性別役割(ジェンダーロール)* に関する自己像・肉食による道徳性の放棄・人間至上主義に関する信念について回答した。
その結果、男性のヴィーガンは、雑食の男性と比べて、自らをより女性的であると考えているが、それに劣らず男性的であると考えていることがわかった。一方、女性ではヴィーガンと雑食でこのような違いは見られなかった。また、雑食の参加者では肉食のために道徳性を放棄する傾向が最も強く、ベジタリアンとヴィーガンではより弱かった。人間至上主義についても同じような傾向が見られた。
さらに、食事スタイルは人間至上主義に対する信念と関係していること、それだけではなく食事スタイルを選ぶ動機もまた人間至上主義に対する信念と関係しており、動物に関する動機に比べて、健康と環境に関する動機は人間至上主義の信念との関係が強いことがわかった。これらの知見は、アニマルライツの活動家、およびマーケティングや保健・教育分野に対して実践的な示唆を与えるものである。
* 社会や文化によって定められた、性別に基づく役割や行動の期待
Magdalena Weber, Marlene Kollmayer
2022/06/06
Psychological Processes Underlying an Omnivorous, Vegetarian, or Vegan Diet: Gender Role Self-Concept, Human Supremacy Beliefs, and Moral Disengagement from Meat