論文概要
オランダとベルギーは欧州連合(EU)の加盟国であり、国境を共有し、文化的にも類似している。EUのリスボン条約第13条は、動物が感覚を持った存在であることを認めている。EU法は、動物の福祉と保護を守るものであり、加盟国はより厳しい法律を施行することができる。政治的重要性 political salience とは、市民が政治問題にどの程度関心を持っているかを示すものであり、政党のマニフェストにおいて動物保護がどのように言及されているかを評価することで、課題としての重要性を測定することができる。
この研究では、オランダとベルギーにおける動物保護の政治的重要性について検証する。オランダ(2012-2021年)およびベルギー(2010-2019年)で行われた3回にわたる国政選挙において、政党マニフェストで示された動物保護に関する2600以上の声明を分析した。
定量的分析から、オランダとベルギーの両国において、3回の選挙を通じて動物保護が次第に強調されるようになり、動物保護について肯定的な声明の総数が増加し、否定的な声明の総数が減少していることが明らかになった。国や地域によって焦点は異なるが、畜産動物のアニマルウェルフェア、および野生動物・生物多様性が最も重要な課題となっていた。
オランダの政党、およびベルギー・ワロン地方の政党は、畜産動物における健康、必要のない苦痛を問題としており、フラマン地方の政党は集約農業とアニマルウェルフェアを訴えていた。ベルギーでは、野生生物・生物多様性に関する声明において、地域の固有種の保護が強調されており、オランダの政党による声明では、農業との関連が強かった。
オランダでもベルギーでも、左派政党の方がより進歩的な政策を掲げており、右派政党は動物保護よりも経済的繁栄を優先していた。本研究は、オランダとベルギーの政治的マニフェストにおける動物保護政策について、最初の学術的な分析を提供するものである。
Annick Hus, Steven P. McCulloch
2023/02/06
The Political Salience of Animal Protection in the Netherlands (2012–2021) and Belgium (2010–2019): What do Dutch and Belgian Political Parties Pledge on Animal Welfare and Wildlife Conservation?