論文概要
アニマルウェルフェアは、持続可能な食糧システムに関する議論において最前線にある課題である。しかし、アニマルウェルフェアを改善することによって生産コストが上昇することも多い。本研究では、スイスの消費者を対象として、バターや牛乳の価格が上昇した場合に、金銭的な負担をしてアニマルウェルフェアの向上に寄与することを望むかどうかを調査した。
スイスの消費者986名を対象とした離散選択実験を実施し、酪農産業におけるアニマルウェルフェアの2つの改善策(ゆとりのある飼育環境と農場での屠殺)、有機生産であること、製品の産地、温室効果ガスの削減のうち、参加者がどの属性を重視しているかについて調べた。さらに、温室効果ガスの削減とアニマルウェルフェアの向上は両立できない可能性があるが、この点に関する消費者の認識を調査した。
参加者の半数に対して牛乳の価格が上昇する状況を提示し、残りの半数の参加者にはバターの価格上昇を提示した。分析の結果、消費者にとってアニマルウェルフェアは(有機生産・製品の産地・温室効果ガスの削減など)他の属性よりも重要であることがわかった。
消費者は、温室効果ガスの削減によってアニマルウェルフェアが後退することには反対しており、飼育環境の改善や、屠殺におけるストレスを減らすために支出する意思を示していた。アニマルウェルフェアの向上に取り組むことは、酪農産業の関係者にとって極めて重要であり、乳製品のメリットを消費者にアピールするうえで有効な材料となる。。
Sebastian Richter, Hanna Stolz, Adan L. Martinez-Cruz, Aya Kachi
2024/10/24
Animal welfare has priority: Swiss consumers’ preferences for animal welfare, greenhouse gas reductions and other sustainability improvements in dairy products