論文概要
植物性タンパク質製品の市場は、かつてない成長を遂げている。しかし、植物性タンパク質製品の幅広い普及が人類や地球の健康にとってどの程度利益をもたらすのかについては、未だ論争が続いている。植物性タンパク質製品についてのメディアがどう認識し伝えているかについての検証は、製品に関する技術を評価するための基礎となる。このような技術評価では、技術革新に関わる関係者に、社会的反応に関する議論や予期せぬリスクなど、製品の普及に重要な情報を提供することを目的としている。本稿では、2010年から2020年にかけて、イギリスの新聞3紙(テレグラフ・ガーディアン・タイムズ)のフレーム分析*を行い、メディアが植物性タンパク質製品をどのように理解しているかを探る。
その結果、植物性食生活に関するメディアの報道は、全体的に肯定的なスタンスをとっていることがわかった。しかし、植物性タンパク質製品、特に肉や乳製品の代替品の描かれ方にはばらつきがあった。特に最大の障害となっているのは、肉や乳製品の代替品を摂取することに関連する、健康への悪影響の可能性だと思われる。したがって、新しい製品を企画する際の戦略的な選択としては、(豆類など)本来の植物性食品により近似した製品の開発にも焦点をあてる必要がある。さらに、植物性タンパク質に関わる産業部門を長期的に強靭にするうえで必要とされるのは、食糧安全保障や食糧システム全体の持続可能性に関する政策目標と十分に整合する戦略である。
* 社会科学において、人々が状況や活動をどのように理解しているかを分析するために使用される研究手法
Maria Tziva , Agni Kalfagianni, Simona Negro, Marko Hekkert
2023/01/26
Plant-based protein products in the news: Mind the gap between innovation and public discourses