論文概要
本研究は、食肉消費の削減に関する研究に新たな知見を提供する。(人間以外の存在の)擬人化には対象を人間化するという内在的な性質があるが、これをネガティビティ・バイアス* と組み合わせて利用することで、肉を食べる意思を低下させる新しいアプローチを考案した。
本研究では、商品パッケージに貼られたステッカーを用いて、動物に痛みを感じる能力があることを強調する擬人化メッセージと、従来から先行研究で使われている他の2つの擬人化メッセージ(動物の知性と向社会的行動)の効果を比較した。
その結果、擬人化を用いて痛みについて説明したステッカーは、食肉製品を購入する意思および食肉全般を消費する意思を低下させ、その効果は、向社会的行動や知性を示したステッカーよりも大きいことがわかった。また、痛みに関するメッセージは肉を購入する意思に対してネガティブな影響を及ぼしていたが、ここでは罪悪感の予期から肉を避ける態度へとつながっていることがわかった。
さらに、擬人化メッセージの効果におけるこのような違いは、ネガティビティ・バイアスによって説明できる。すなわち、向社会的行動に関するメッセージや知性に関するメッセージを、痛みに関するメッセージと同しようにネガティブに提示した場合、これら3種類のメッセージは、食肉を購入する意思を等しく低下させ、食肉消費を削減する意思を強めるうえで同様に効果的であった。
* 人はポジティブな情報よりもネガティブな情報に注意を向けやすく、記憶にも残りやすい性質を持つこと
2021/07/19
Animals Like Us: Leveraging the Negativity Bias in Anthropomorphism to Reduce Beef Consumption