論文概要
西洋社会における肉の大量消費は、気候変動・環境破壊・健康コストの大きな原因となっている。肉の消費を減らす方法の一つとして、職員食堂におけるナッジ*1を用いることが考えられる。これまでの研究で、ナッジが消費者の選択に影響を与えることは示されているが、さまざまなナッジの効果を職員食堂という状況で比較した研究は乏しい。
そこで本研究では、消費者が肉を含まないメニューを選択するように促すための介入方法を検証するため、食事ガイドラインの内容を書面で説明したプロンプト*2・視覚的な説明(スイス版フードガイド・ピラミッド)を用いたプロンプト・食肉の消費が減少していることに関してスイス社会の規範の変化を説明したプロンプトの3種類のプロンプトについて、それぞれを個別に用いた場合と、組み合わせて用いた場合の有効性を比較した。
1×8要因の被験者間デザインによるオンライン選択実験において、参加者(2198名)は、肉を含むメニュー、ベジタリアンのメニュー、サラダビュッフェからの選択を15回行った。書面によるプロンプトが視覚的プロンプトと組み合せて提示された条件では、対照条件に比べて肉なしの選択肢が選ばれる頻度が高かった。介入の効果に最も寄与していたのは書面によるプロンプトであった。効果としては小さかったものの、この介入の組み合わせは、心理学的特性に関わらず、すべての参加者に有効であったことから、フィールド実験でさらに検証することが重要となる。
*1 行動科学の手法で、経済的なインセンティブや明示的な行動の強制なしに、無意識に働きかけて行動変容を促す *2 望ましい行動を引き出すためにきっかけとなる刺激
Samuel Zumthurm, Aline Stämpfli
2024/01/12
A diet-related health prompt with the Swiss Food Pyramid as a nudge to reduce meat consumption