論文概要
地球環境の健全性を維持するためには、人類の活動による地球資源の利用を一定の範囲に制限し、環境の悪化を避けなければならない。現在、食糧システムは天然資源を大量に使用し、気候変動や土地の劣化、水の利用、その他の影響に大きく関わっており、そのために食糧安全保障が損なわれることで人類の健康を脅かしている。さらに、動物性食品を多く含み、カロリー過多となっている現在の食事パターンは、人類と地球の健康の双方にとって有害である。こうした食生活-環境-健康のトリレンマを解決するためには、社会レベルでの食生活の変化が不可欠である。
ベジタリアン食は健康的な選択肢であることが明らかにされている。また、ほとんどの植物性食品は、動物性食品、特に(牛・羊など)反芻動物の肉や乳製品に比べ、少ない資源で生産が可能であり、環境に対する負荷も少ない。この総説では、ベジタリアン食について、環境の視点から見た持続可能性と、人類の健康との整合性を併せて検証する。
一般に、肉を含む雑食から離れてオボラクトベジタリアン・ヴィーガンの食生活へと移行することは、環境における持続可能性の向上と結び付いている。現在行われている雑食のほとんどと比較した場合、ヴィーガンやオボラクトベジタリアンの食事に起因する温室効果ガス排出量は、それぞれ約50%、約35%少なく、これに伴って天然資源の使用量も削減できる。また、現在の食事パターンから持続可能なベジタリアン食に移行すれば、それに見合った健康上の利益が得られる可能性がある。
従って、ベジタリアンの食事では、健康と環境の両面におけるアウトカムが一致していると考えられる。このことは高所得国において、人類の健康と環境の持続可能性の両面でベジタリアン食がもたらす便益となるが、それ以外の側面における課題や、社会規範として肉を食べない食生活を推進する政治的意志に関しては問題が残っている。
Ujué Fresán, Joan Sabaté
2019/11/15
Vegetarian Diets: Planetary Health and Its Alignment with Human Health