論文概要
目的: ベジタリアンの食生活が脳卒中の発症率に対してどのように影響するかを2つの前向きコホート研究で検証し、食事からのビタミンB12摂取との関連について探索する。
方法: 慈済(Tzu Chi)健康調査(コホート1)および慈済ベジタリアン調査(コホート2)の参加者のうち、脳卒中の既往歴のない者を対象として、2014年末まで追跡調査を実施した(コホート1では2007~2009年に募集した5,050人、コホート2では2005年に募集した8,302人)。各参加者の食生活の状況については調査開始時に食物摂取頻度調査票を用いて評価した。脳卒中の発症および調査開始時に併存した疾患に関しては、国民健康保険調査データベースを用いて特定した。コホート1の参加者1,528人については、血清中のホモシステイン・ビタミンB12・葉酸の濃度を測定した。年齢を時間尺度としたCox回帰分析によってベジタリアン食と脳卒中の発症との関連を推定し、性別・学歴・喫煙・アルコール・身体活動・肥満度(コホート1のみ)・高血圧・糖尿病・脂質異常・虚血性心疾患について調整した。
結果: ベジタリアンでは、非ベジタリアンに比べて血清ビタミンB12値が低く、葉酸値とホモシステイン値は高かった。コホート1では、30,797観察人年の追跡調査において54件の脳卒中が発生した。このうち、ベジタリアンでは、非ベジタリアンに比べて脳梗塞の発症リスクが低下していた(ハザード比* HR = 0.26、95%信頼区間CI = 0.08-0.88)。コホート2では、76,797観察人年の追跡調査において121件の脳卒中が発生した。このうち、ベジタリアンでは、非ベジタリアンに比べて脳卒中全体(HR = 0.52、95%CI = 0.33-0.82)、脳梗塞(HR = 0.41、95%CI = 0.19-0.88)、脳出血(HR = 0.34、95%CI= 0.12-1.00)において発症リスクが低下していた。探索的解析では、ベジタリアン食と脳卒中全体との関連にビタミンB12の摂取が影響している可能性が示された(p interaction= 0.046)。
結論: 台湾においてベジタリアン食は、脳梗塞・脳出血を発症するリスクの低下と関連がある。
*単位時間当たりにイベントが発生する相対的な危険度(ハザード比が0.26の場合、危険度は0.26倍となる)
Tina H T Chiu, Huai-Ren Chang, Ling-Yi Wang, Chia-Chen Chang, Ming-Nan Lin, Chin-Lon Lin
2020/02/26
Vegetarian diet and incidence of total, ischemic, and hemorrhagic stroke in 2 cohorts in Taiwan