論文概要
ヨーロッパの水産養殖業は急成長を遂げており、全体としては陸上動物よりも多くの水生動物が養殖されている。しかし、魚類などの水生動物のウェルフェアについてはあまり注目されてこなかった。本研究では、北欧のケージで養殖されているアトランティック・サーモンとニジマスという、ヨーロッパの水産養殖業に最も大きく貢献している魚2種に焦点を当てる。
ウェルフェアに関わる可能性のある問題について広範な文献調査を実施し、魚類にあわせて改編したアニマルウェルフェアの枠組みに従って、5つの規定と福祉目標へと問題を分類した。これらの問題に優先順位を設定するためにデルファイ法による評価を実施し、それぞれの問題について、複数の専門家が深刻度・期間・有病率に関する評定を行った。参加した専門家らにはまた、主要な問題に取り組むための介入策について提案を求めた。
ウェルフェアに関して特定された主な問題は、効果のない疾病予防対策、ウミジラミ治療に関する問題、劣悪な飼養環境であった。これら3つの問題を改善するための介入策としては、飼養密度を下げること、モニタリングを改善すること、そして特にウミジラミなどの疾病を予防するためのより効果的なワクチンの開発などであった。
ヨーロッパのサケ科魚類の養殖における魚類のウェルフェアに関する諸問題のうち、どの問題により緊急に取り組むべきか、この研究結果からは重要な洞察が得られる。今後の研究では、介入策についてより詳しく検証し、その他の水産養殖動物や地域に関して調査する必要がある。
Lucia van den Boogaart, Hans Slabbekoorn, Laura Scherer
2023/04/07
Prioritization of fish welfare issues in European salmonid aquaculture using the Delphi method