論文概要
水産養殖はかつてない急成長を遂げているが、環境や公衆衛生における様々なコストが発生していることはよく知られている。しかし、アニマルウェルフェアにおける世界的なリスクについてはあまり理解されていない。本研究では多数の情報源からのデータを統合し、養殖されている水生動物の分類学的多様性、年間殺処分数、種に固有のウェルフェアに関する知識(これを欠くとリスクは極めて大きくなる)を推定した。
国連食糧農業機関の報告によれば、2018年には6つの門* から少なくとも408種、8,212万トンの水生動物が養殖されており、これは生物種の数としては陸上の畜産動物の20倍に相当する。養殖で生産される水生動物のトン数は2,500億から4,080億個体に相当し、そのうち590億から1,290億個体が脊椎動物(コイ・サケ科など)である。ウェルフェアに関する専門的な情報が得られたのは84種で、個体数の30%に過ぎず、残りの70%はウェルフェアに関して発表された資料が存在しないか、不明な種であった。
水産養殖業はアニマルウェルフェアに関する知識を上回る勢いで急成長しているが、生産量が多いにもかかわらず十分に研究されていない水生動物種は数多く、そのウェルフェアを守り、リスクを最小化する政策を策定するための早急な取り組みが必要である。
* 生物分類のリンネ式階層分類における基本的分類階級のひとつで、界の下・綱の上に位置する。生物全体はおよそ100の門に分類されている(Wikipedia より抜粋)
Becca Franks, Christopher Ewell, Jennifer Jacquet
2021/04/02
Animal welfare risks of global aquaculture