論文概要
ベジタリアンやヴィーガン(菜食主義者)から肉食に戻ってしまうのは珍しくなく、菜食主義を維持することは困難であることを示唆している。しかし、いったんは肉食を避けると決めたにもかかわらず、再び動物を食べる食生活に戻ってしまう理由はほとんどわかっていない。これを説明できる潜在的な要因としては、個人的な不便さ、肉への欲求、社交の場での気まずさ、健康・栄養への懸念などがある。ここでは、政治的イデオロギーによって肉食への回帰がどの程度まで予測できるかについて検証する。
過去の研究では、政治的イデオロギーによって現在の肉消費レベルが予測できることが示されており、これによれば、右派のイデオロギーを支持する傾向が強い人は、肉の味に対する嗜好の影響を差し引いたとしても、より多くの動物の肉を食べている(例えば、Dhont & Hodson, 2014)。とすれば、菜食から肉食に戻ったかどうかに関しては、政治的イデオロギーからどの程度まで予測できるのだろうか?
現時点で菜食を続けている人と過去に菜食主義者であった人を対象として、米国の地域社会の人口構成を概ね反映したサンプル(1313人)に関する調査では、年齢・学歴・性別の影響を差し引いても、保守的な傾向が強い人は(そうでない人に比べて)、現在の菜食主義者より過去の菜食主義者である確率が有意に高かった。
菜食をやめることとイデオロギーの間にあるこのような関係は、保守傾向の強い人では次のような傾向があることによって説明された。すなわち、社会的正義に対する関心(アニマルライツ・環境・貧しい人々に食事を提供することなど)が菜食主義を選ぶ際の重要な動機ではないこと、菜食主義を続けることが社会的に支持されていないと感じやすいことである。これとは対照的に、肉の味に対する嗜好の違いやライフスタイルの不便さといった要因は、イデオロギーと菜食を離れることの関係にはほとんど影響していなかった。
これらの結果は、菜食の選択を維持するレジリエンスを理解する上で、イデオロギーと社会的正義への関心は特に考慮する必要があることを示している。人々がなぜ肉を食べるのかを理解し、介入戦略を開発する方法に関して、今回の研究結果の意義を議論する。
Gordon Hodson, Megan Earle
2017/08/30
Conservatism predicts lapses from vegetarian/vegan diets to meat consumption (through lower social justice concerns and social support)