論文概要
プラネタリー・ヘルス・ダイエット* (PHD)は、EAT-Lancet基準食としても知られ、世界の食事の質を最適化することを目的として開発された食事法であり、これによって同時に食料生産による影響を地球環境で持続可能な限界内に保つことができる。我々は、現時点での各国および世界におけるPHDの遵守状況を評価するための指標としてPHDインデックスを算出した。さらに、米国における3つの大規模コホート(男女の合計206,404人、死亡者数54,536人)からの食事と死亡率に関するデータを用いて、20歳以上の成人における総死亡率と原因別死亡率のうちPHDへの移行によって予防できる割合を推定した。
PHDインデックスの値は国によって大きく異なるものの、世界全体で見た場合の遵守状況は最適というには程遠いものだった(最高値140に対して平均値85)。仮に世界のPHDインデックスを120までに改善できれば、年間で約1,500万人の死亡(総死亡の27%)を防ぐことができ、これによって心血管疾患では250万人、神経変性疾患では70万人の死亡を予防できると推定された。
我々の分析によれば、健康的で持続可能な食習慣を選択すれば、様々な疾病に起因する死亡率を減少させることによって健康面で大きな直接的利益が得られることに加え、国連の持続可能な開発目標を達成するうえで大きく貢献できる可能性がある。ここで推定した予防可能な死亡者数は、人種や民族を問わず、人類は生物学的に類似しているという知見に基づいているが、試算の前提条件には限られたデータに基づくものもあるため、正確な推定値の解釈には慎重を要する。今後、各地域における食習慣と死亡率に関するデータをさらに入手できるようになれば、より精緻な推定が可能になると考えられる。
* EAT-Lancetダイエットとも呼ばれ、果物や野菜など加工度の低い植物性食品の摂取を重視し、魚や肉、乳製品の摂取は控えめにする食事法。
Xiao Gu, Linh P. Bui, Fenglei Wang, Dong D. Wang, Marco Springmann, Walter C. Willett
2024/12/02
Global adherence to a healthy and sustainable diet and potential reduction in premature death