論文概要
人間以外の動物の法的地位のあり方に関して、法学者・哲学者・動物科学者・社会科学者・人道主義活動家らによって活発な議論が行われてきた。しかし、動物の権利のために提案された枠組みについて、その利点や欠点をどう考えるのかなど、動物の法的な取り扱いに関する一般市民の捉え方についてはあまり注目されてこなかった。
この研究では、非活動家を対象としたフォーカス・グループ*において、社会における動物の扱いや、法の下での動物の扱いについて、一般市民がどう捉えているかを探った。さらに、動物の法的権利について支持派および反対派が提示する考え方やメッセージに対する一般市民の反応を調査した。
その結果からは、心理的および文化的な規範・対人および動物との関係における経験・これらに媒介されるコミュニケーションが関連づけられ活性化することで、さまざまな種類の動物に対する考え方が形成されることが窺われた。ここで形成される一連の信念は、動物の法的権利とはどのようなもので、どうあるべきなのか、またどのような動物が法的な保護に値するのかなどに関するもので、これらは相互に矛盾することも少なくなかった。
回答者らは動物がより尊重され扱われる世界を望み、アニマルウェルフェアを志向した、法による動物の保護が重要であると考えていた。その一方ではしかし、これを現実に実施するにあたっては直感的・論理的に想定される懸念がいくつかあり、そのために動物の法的権利への支持はやや弱まっていた。主な反対意見としては、法的に特定の動物種を含み、他の種を含まないような線引きが可能なのかという疑念や、どうすれば動物が自らの権利保護を主張できるのかという運用上の問題に論点が集まっていた。最後に、研究者だけでなく法律や動物の権利に関わる実務家のために、これらの知見が持つ意義について簡単に議論する。
*マーケティングやリサーチにおいて、調査の目的を達成するために、共通の属性を持つ人々を集めて行うインタビューやディスカッションなどの調査手法
Garrett M. Broad
2020/09/08
Using Focus Groups to Explore Public Perceptions of Legal Rights for Animals