論文概要
動物実験に関する3R 原則(代替法の利用 replacement, ・数の削減 reduction・苦痛の軽減 refinement)の実施は、EU指令 2010/63において強く要請されている。アニマルウェルフェア委員会 animal welfare bodies(AWBs)では、動物実験施設におけるアニマルウェルフェアを強化し、3R の原則を推進することをミッションとしている。2016年、スウェーデンの主要大学 8校に設置されている AWB を対象として、3R 原則に関する知識と態度、実施状況を調査した。
自由形式による34項目の質問に対して、AWB の委員90名のうち44名から回答が得られたが、全体として3Rに対する態度は肯定的なものであった。AWB 委員は、3R 原則がイノベーションを遅らせる、あるいはコスト増につながるとは考えておらず、動物の苦痛を軽減することは研究の質にとって有益であると考えていた。調査においてAWB 委員は、苦痛の軽減に関することに対して特に肯定的であった。大多数の委員は、代替手段が動物実験に取って代わることはないと予想していた。
研究者出身の委員では、獣医師出身の委員と比べると3R 原則に対して肯定的な意見は著しく少なかった。AWB の任務には、3R 原則に関するアドバイスや、研究計画に使われた動物の追跡などが本来は含まれるが、今回調査した AWB では実施されていないか、周知されていないことが多かった。
これらの結果は、AWB に対してより実践的で規制を含む指導や支援を提供する必要があることを示している。EU 指令では、研究・教育における動物の利用を段階的に廃止することが目標となっており、これを達成するためには、代替技術に精通した専門家を AWB の委員として含める必要がある。また、スウェーデンの大学研究者においては 3R 原則に対する認識の向上が強く求められる。
Johan Lindsjö, Charlotte Berg, Ulf Olsson, Elin Törnqvist
2021/03/29
The 3Rs in animal welfare bodies at Swedish universities - knowledge, attitudes, implementation