論文概要
畜産による温室効果ガス排出は気候変動の大きな要因であるにもかかわらず、畜産が気候に及ぼすコストは統合的な方法によって定量化されていない。マクロ経済と気候を結びつける手法を用いて、世界の農業経済と産業経済を連結し、これらのコストを各地域レベルで推計した。
その結果、今世紀末の気温上昇を1.5~3℃と仮定した場合、農業からの排出が10%増加するごとに、産業からの排出を1.5%減少させる必要があることがわかった。これは動物性食品がもたらすガス排出の機会費用である。あるいは、農業からの排出が産業部門で相殺されない場合、動物性タンパク質を多く含む食生活によって、気候に関連して年間1人当たりの上乗せ72米ドルの被害が発生する。これは米国の平均的な乗用車が年間で気候に与える被害の約半分に相当する。
我々の分析では、気候コストは地理的に見て均一ではなく、食習慣と食品の種類によって異なっていることから、食糧安全保障上のリスクを考慮しながら緩和のための政策を講じる余地があると考えられる。
* 時間の使用・消費の有益性・効率性にまつわる経済学上の概念であり、複数ある選択肢の内、同一期間中に最大利益を生む選択肢とそれ以外の選択肢との利益の差のこと。最大利益を生む選択肢以外を選択する場合、その本来あり得た利益差の分を取り損ねていることになるので、その潜在的な損失分を他の選択肢を選ぶ上での費用(cost)と表現している(Wikipedia より引用)
Frank Errickson, Kevin Kuruc & Jonathan McFadden
2021/04/21
Animal-based foods have high social and climate costs