論文概要
世界では毎年、数えきれないほど多くの動物たちが人間に利用されており、その中には社会的な懸念を呼んでいるものも多い。動物目的調査票(Animal Purpose Questionnaire, APQ)は、動物の利用に関する態度を、その目的と動物種に関連付けて測定するために考案された新しい尺度で、英国人415名とその他39カ国からの68名を含む合計483名の参加者から回答を得た。
2つの調査において、APQを参加者に提示し、既に確立されている動物態度尺度(Animal Attitudes Scale Q, AAS)も併せて提示した。参加者はまた、動物に対する態度の背景となる、(性別・年齢・教育歴など)人口統計学的な特性についての詳細についても回答した。予想されたように、AASとAPQの総合得点は高い相関性を示し、(検査法としての)新しい尺度の妥当性を示唆していた。しかし、APQでは、さまざまな状況における動物の利用についての人々の態度を、より詳しく区別して測定することができた。
その結果として、医学研究と基礎科学における動物の利用については参加者の同意のレベルは全体的に高く、食品生産と害虫駆除における利用に対する支持はそれより低いことが明らかになった。また、それ以外の文化的行事などの慣行における動物の利用に関しては、動物種に関わらず、全般的に支持されていないことが示された。
参加者は全体的に、ウサギ・サル・アナグマ・ツパイ*1(調査1)、チンパンジー・イヌ・イルカ・オウム(調査2)を利用することには反対だったが、ラット・マウス・ブタ・タコ・ニワトリ・ゼブラフィッシュ*2(調査1)、コイ・ニワトリ・ブタ・ハト・ウサギ・ラット(調査2)の利用については中立だった。
動物種と利用目的の間には交互作用が見られたが、これは主として食品生産のために様々な動物種が使われることが考慮されたためであった。全体として、女性とベジタリアンは動物の利用についてあまり同意していなかったが、利用の目的によっては若干の相違があった。ペットを飼育した経験がある参加者では、基礎科学研究への動物の利用に対する支持は、2つの調査で一貫して低下していた。人口統計学的特性や動物種、利用目的などの要因が絡み合うことで人々の態度がどのように変わるか、APQは、こうした問題を解き明かすための新しいツールを提供する。
*東南アジア産でリスに似た樹上性の小型哺乳動物 *2インド原産で体長5センチほどの小型の淡水魚
Alexander Bradley, Neil Mennie, Peter A. Bibby, Helen J. Cassaday
2020/01/21
Some animals are more equal than others: Validation of a new scale to measure how attitudes to animals depend on species and human purpose of use.