論文概要
畜産が環境に与える大きな影響や、世界的な温室効果ガス排出削減の必要性が差し迫る中で、ベジタリアン食への食生活の転換は喫緊の課題である。これまでの研究によれば、低コストでスケーラブルなメニューデザインを介入手段として使うことで、大規模な啓発キャンペーンの必要なく食事の選択に影響を与えることができる。ここに提示する2つのオンライン無作為化比較試験では、参加者の食事選択を肉料理からベジタリアン料理へと誘導するうえで、メニューデザインに関する2つのアプローチの有効性を検証した。
研究1では、メニューにあるベジタリアン料理の選択肢の幅による選択への影響を調べた。ベジタリアン料理の割合が75%・50%・25%となっている3種類のメニューのうち、いずれか1つを参加者に提示した。結果として、肉を食べる人々は、75%のベジタリアンメニューを提示された場合にベジタリアン料理を選択する可能性が有意に高かったが、50%のベジタリアンメニューを提示された場合はそうではなかった。このことは、ベジタリアン食を促進するためには、メニューの選択環境をベジタリアン料理で充たす必要があることを示している。
研究2では、各料理の名前に付したベジタリアンのシンボル「V」が、肉を食べる人にとって選択から除外するためのフィルターとなるかどうかを調べた。過去の研究によれば、メニューの中に「ベジタリアン料理」のセクションがあると、肉を食べる人はそのセクションの料理を選ばない。しかし今回の結果では、料理ラベルの左右にVマークを配置しても料理の選択には影響しなかった。これらの研究結果は、簡単でスケーラブルなメニューデザインを用いて外食産業の環境フットプリントを削減できる可能性を示している。
B.L. Parkin, S. Attwood
2021/11/07
Menu design approaches to promote sustainable vegetarian food choices when dining out