論文概要
畜産動物をストレスの高い過密な環境で飼育することにより、人獣共通感染症*1をはじめとする病原体が出現し、伝染と繁殖のリスクが高くなることが数多くの研究で示されている。こうした人獣共通感染症の中には、パンデミックにつながるものもある。バイオセキュリティ*2は不可欠ではあるが、それだけでは大規模で集約的な飼養施設への疾病の侵入を防ぐには不十分である。疾病のリスクを最小限に抑えるためには、バイオセキュリティ対策に加え、良好な健康状態と有効な免疫力を維持できる条件下で畜産動物を飼養する必要がある。
人類の健康に対するさらなる脅威は、集約的畜産において疾病予防のために抗菌剤が日常的に使用されていることに起因している。このような抗菌薬の大量投与は、抗菌薬への耐性が動物の体内で出現することと大きく関わっており、これがヒトへと移行することで、医療の場できわめて重要な抗菌薬の効果が損なわれることになる。
抗菌薬の使用を減らし、将来の人獣共通感染症やパンデミックのリスクを最小限に抑えたいのであれば、畜産動物の飼養を「健康志向のシステム」へと移行させる必要がある。健康志向のシステムでは、高い飼養密度を避け、群れのサイズが大きくならないようにする必要があり、動物のストレスや混在を最小限に抑え、動物が本来の自然な行動をとれるようにしなければならない。また、生産量を過剰なレベルに増やすために人為的に選別された動物には免疫力の問題や病原性のリスクが増加する可能性があるため、用いるべきではない。
* 畜産動物や農作物への病原体の侵入や病気の蔓延を防ぐための取り組みや体制(コトバンクより抜粋) *2 同一の病原体により、ヒトとヒト以外の脊椎動物の双方が罹患する感染症
Peter Stevenson
2023/08/19
Links between industrial livestock production, disease including zoonoses and antimicrobial resistance