論文概要
感染症はそのほとんどが人獣共通感染症であり、動物からヒトへ「飛び移る」ものである。人獣共通感染症の多くは大規模な工場畜産から発生するが、社会では野生動物を取引する市場に非難が向けられたり、(専門チームの待機や医療機器への投資など)事後的な対応に焦点をおいて議論されるなど、今後のパンデミックの発生を防ぐうえで心理的な意味での障害が存在している。
事前登録された2件の研究を2020年のパンデミック初期に実施し、英国の成人が工場畜産を伝染病の原因として認識できていない可能性、またそこに何らかの動機が存在する可能性について検討した。横断データ(研究1・302名)から、工場畜産および世界における食肉の消費は、野生動物の取引・消費や政府の危機管理不足ほどには問題視されていないことが明らかとなり、これは肉へのこだわりが強い人々で顕著だった。
実験データ(研究2・194名)では、工場畜産を批判する情報を参加者に提示した場合、(野生動物を扱う市場に関する情報を提示した場合に比べて)パンデミックへの予防措置に対する支持は事後的な対策への支持を下回り、この傾向は肉へのこだわりが強い人々において特に強いことがわかった。
工場畜産と食肉消費をターゲットにして今後のパンデミックを予防する対策は、社会の中でも特に肉食に強いこだわりを持つ人々によって、まさにその食習慣のために故意に無視されていると考えられる。パンデミックの原因と対策に関する考え方には動機があり、これを理解することは今後の介入策を展開するうえで極めて重要である。
Kristof Dhont, Jared Piazza, Gordon Hodson
2021/09/01
The role of meat appetite in willfully disregarding factory farming as a pandemic catalyst risk