論文概要
培養肉(クリーンミート)は、従来の食肉に代替する食品として大きな可能性を秘めており、食肉産業に起因する持続可能性の問題を緩和するためにも期待されている。しかし、食肉生産におけるこの革新的な方法には不自然さや嫌悪感があるとして、消費者の受け止め方はあまり芳しくないのが現状である。
先行研究において、例えば自然さや倫理面での利点を訴えることで、培養肉に対する受容が高まる可能性が示されている。しかし、これらの研究においては、様々に異なったアピールによる効果を個別に検証したのみで、基底にある心理的メカニズムは検討されていないため、その知見の意義は限定的である。そこで、自然さと倫理における2つの利点を合わせたアピールによって、培養肉に対する消費者の嗜好をより高められるか、本研究において初めて検証した。具体的には、米国(302人)と英国(303人)の参加者を対象に2つの実験を行い、自然さと倫理の複合アピールが、いずれか一方に絞った単一のアピールや、アピールなしの条件に比べて効果があるかどうかを調べた。
結果は従来の知見を拡張するもので、複合アピールはコミュニケーションの効果を高め、単一アピールやアピールなしと比較して、参加者は培養肉製品に対して有意に高い選好を示した。このような複合アピールによる消費者の嗜好への影響に関して、結果からはまた、嫌悪感と思いやりがその基底にあることが明らかになった。これらを総合すると今回の研究は、培養肉に対する消費者の選好と受容を促進するうえで、マーケティング介入の効果を高めるためのさらなる知見を提供するものである。
Felix Septianto, Billy Sung, Chien Duong, Denise Conroy
2022/12/07
Are two reasons better than one? How natural and ethical appeals influence consumer preferences for clean meat