論文概要
動物に対する態度が恵まれない人々に対する態度と相関していることを示した研究は増えつつあり、この関連性は社会的支配のイデオロギーに基づくものとされている。社会的ヒエラルキーと集団間の支配関係を支持する態度は、人間の集団間だけでなく人間と動物の関係にも及ぶと考えられている。このように種差別主義と人間の集団間関係に対する態度が関連していることについて、本研究では、こうした関連が見られる範囲、およびその基礎にある心理メカニズムを検証した。
種差別主義からは、ステータスの低い人々(恵まれない状況にある民族的マイノリティなど)や社会変革を支持する人々(フェミニストなど)をより低く評価する態度が予想されるのに対し、社会的なステータスとは関係なく否定的に見られている人々(無神論者など)への態度に関してはこのような関連はないと予想される。
2つの研究(研究1=98名・研究2=82名)ではこの予測を検証するため、種差別と社会的支配志向性に関する尺度に加え、上述の人々を含む31種類の人間集団への態度に関する調査尺度を用いた。参加者はカナダ・オンタリオ州にある中規模大学の1年生・2年生である。
予想されたように、いずれの研究においても種差別主義は、ステータスの低い人々や社会変革を支持する人々を低く評価する態度と関連していた。さらに、種差別主義と集団間関係に対する態度に関連があることは、両者がいずれも社会的支配志向性と結びついていることから説明された。
種差別主義と偏見の関連性を示す研究は増えつつあるが、本研究の結果はこれに新しい知見を加えるものであり、種差別主義と偏見はいずれも社会的ヒエラルキーを強く支持するものであるため、集団間関係における不平等を肯定する態度につながっていることを示している。
Lynne M. Jackson
2019/06/28
Speciesism Predicts Prejudice Against Low-Status and Hierarchy-Attenuating Human Groups