論文概要
食料システムによる環境負荷を削減するためには、需要側における変化、特に消費量の多い集団において動物性食品の消費を削減することが必要となる。食事パターンを変えることは難しいため、赤身肉の削減を促進する政策が必要となるが、そうした政策は一部の食品業界関係者の反対に遭う可能性が高い。
その一例が、北欧諸国における全ての食品に関する食事ガイドラインの根拠となるエビデンスを集約した北欧栄養勧告Nordic Nutrition Recommendations (NNR) である。NNRの改訂版では、健康のためには赤身肉と加工肉の消費量を週350gまでに制限することを推奨する一方で、環境のためには「相当に減らす」ことを勧告している。こうしたNNRの改訂に際し、北欧の食肉業界関係者と農業組合は、赤身肉の摂取量を減らすことを推奨する内容にいち早く反応した。
本研究では、NNRに関する公開協議において、赤身肉の消費に関してこれらの関係者が表明した回答についてのフレーム*分析を行った。分析の枠組みは、食肉消費量の多い国々で食肉業界が広く使用しているフレームに関する資料に基づいて構築した。
その結果、食肉産業を擁護する関係者は、赤身肉の消費は健康に良いものであるとし、赤身肉の生産が社会・経済・環境に利益をもたらすものとすることで、全般的に赤身肉の消費・生産の削減に反対していることがわかった。業界関係者はまた、赤身肉の消費削減を支持する科学や科学者にも疑問を呈していた。
こうした関係者らが赤肉消費をどのようにフレーミングし、持続可能な食生活のためのガイドラインの策定に影響を与えるために利用しているかを理解することは、食事に関する指針作成を担当する国の関係当局にとって極めて重要である。
* 情報に対する見方・受け止め方、物事や人への印象や意味を左右する心理的枠組み
Amanda Wood*, Janice Swan, Talia Masino, Bjørk Tørnqvist and Elin Röös
2025/01/10
Meat is healthy, green and vital to social and economic sustainability: frames used by the red meat industry during development of the Nordic Nutrition Recommendations