論文概要
肉の消費に対する両面的で相反する感情は、肉を食べる楽しみと同時に引き起こされる、動物を傷つけることへの嫌悪感から生まれる。なんらかの方略によって肉食を正当化することは、このような認知的不協和に対処する手段となる。
本研究の目的は、こうした正当化の方略によって肉の消費を擁護することと、さまざまな食肉生産システム(放し飼いによる鶏肉、天然の魚、慣行の生産による子牛肉など)を道徳的観点からどう考えるか、その捉え方との間にある関係を検証することである。さらに、正当化のためのこれらの方略が、肉の消費量、および肉を代替する意欲とどのように関連しているかの評価も試みた。
ドイツの参加者973名(男性49%・女性51%)を対象にオンライン調査を実施し、肉食を正当化する方略(謝罪的で弁解の意味合いでの正当化・それ以外の弁解ではない正当化)、魚類を含む12種類の食肉生産システムに対する道徳的観点からの評価、肉を摂取する頻度(加工肉を含む)、肉を代替する意欲について検討した。
弁解的ではない正当化の方略(動物の苦しみを否定する、健康を理由として正当化するなど)は、いずれも肉の摂取頻度と正の相関を示し(r = 0.14からr = 0.42、p < 0.001)、肉を代替する意欲とは負の相関を示した(r = -0.31からr = -0.51、p < 0.001)。参加者は、従来の畜産システムのほとんどを道徳的に正当化できないと評価しているにもかかわらず、実際の食肉消費や肉を代替する意欲に関しては、そうした考え方に従って行動することはなかったと考えられる。
したがって、大量生産システムにおけるアニマルウェルフェアのみで単独に食生活の変化を引き起こす動機になり得るとは考えにくく、とりわけ弁解によらない方略で肉食を正当化する消費者では期待できない。政策と消費者行動に関する意義について考察する。
Christina Hartmann, Michael Siegrist
2019/09/21
Our daily meat: Justification, moral evaluation and willingness to substitute