論文概要
好きで肉を食べているにも関わらず、肉を食べることに不安を抱く人は増えている。本研究では、肉食に関するこの両面感情(アンビバレンス)を解消したいという欲求が、肉食を減らすことにつながるかどうかを調べた。
ここで提示する概念モデルは、アンビバレンスが動機となって肉食が減少することを仮定したもので、これによれば、人々がアンビバレンスに向き合う際の心理的葛藤には汎化する性質があるため、肉食を避けるための動機として働く。このような変化においては、行動変容によってアンビバレンスを軽減することへの期待や、肉食を減らすうえで有効な情報(調理法や代替食品など)を探索する過程が潜在的なメカニズムとして関与している。
研究1では、6日間の食事記録による横断調査から割当抽出法で得られた7485件の観察データを用いた。ここでは、食肉に関連したアンビバレンスがなぜ生じるかを検証し、アンビバレンスと肉食の減少の間に相関があることを明らかにした。次の2つの実験では、この相関関係においてどちらが原因で結果なのか、その方向性を検証した。研究2・3では、参加者が事前に持っていたアンビバレンスについて内省したとき、そこで生じる不快感が肉を食べる量を減らす動機になることを示し、さらに研究3ではこれに前述のメカニズムが関与していること示した。
本研究では、ドイツ・英国・米国からの多様なサンプル(計1192人)を用いて、食肉消費におけるアンビバレンスの不快感を解消するうえで行動変容が重要な戦略であることを示し、その結果は提示した概念モデルを裏付けるものであった。アンビバレンスが動機となって肉食の減少につながる本研究のモデルは、アンビバレンスがもたらす帰結や肉を食べる(食べない)の心理についての理論的検証に寄与するものである。