論文概要
- 食事に与えられる象徴的価値は、肉の消費を減らす意思に影響を与える
- 食への心理的関与によって食肉消費を削減する意思を予測できる
- 食によって自分の社会的イメージをコントロールしようとする消費者は、肉食を減らす傾向が強い
- 食を通じてポジティブな感情を得ることを望む消費者は、肉食を減らす傾向が低い
- 食肉削減を促進するためのツールとして、食への心理的関与における動機を利用するべきである。
最近の数年間で食肉の過剰消費は著しく増加してきたが、このことは環境や人間の健康、動物の幸福にとって有害で望ましくない有害な結果をもたらしている。これらの課題に対処するためには、肉の消費を減らす動機を深く掘り下げて検討することが不可欠である。最近の研究では、食が象徴的な価値を獲得しつつあることが明らかにされ、研究分野として重要となりつつあるが、ここでは人々が食物に付与する象徴的価値を記述するために、食への心理的関与*(Psychological Food Involvement:PFI)と呼ばれる新たな心理学的構成概念が開発され、その有効性が実証されている。
先行研究では、PFIによって持続可能な消費行動が予測できることが示されているが、食肉消費を減らす意図との関連を調査した研究は不足している。このギャップを埋めるために、本研究では、イタリアの人口を代表する1007人の参加者を対象として質問票調査を実施し、層別サンプリングにより性別・年齢・職業・地域人口・地域を考慮してデータを収集した。
記述統計に加え、社会人口統計変数および態度変数(個人の健康・環境・アニマルウェルフェアへの関心など)を考慮した階層的回帰モデルを用いた結果、PFIが食肉消費を減らす意図を理解する上で極めて重要であることが明らかになった。食を利用して自分の社会的イメージをコントロールし、肯定的な印象を与えようとする消費者では、肉の摂取量を減らす傾向が強かった。一方、食によって社会との結びつきを強め、肯定的な感情を得ようとする消費者では、肉の消費を減らす傾向は弱かった。今後の食事摂取基準を策定し、健康で持続可能な食生活を推進するための研究を実施する際には、食肉消費に関連する文化・社会・個人のレベルでの価値観を考慮することが重要である。
*人々の生活における食の重要性を測定する尺度で、食に関わる4つの象徴的意味(感情のバランス・自己実現、社会的肯定感・社会的絆)を含む。
Greta Castellini, Mariarosaria Savarese, Guendalina Graffigna
2023/11/04
The role of psychological food involvement in explaining the intention to reduce meat consumption