論文概要
ビーガニズムは、完全または部分的に動物由来の食品を控える習慣である。本定性的探索研究は、内発的および外発的動機づけ理論とセンスメイキング理論の視点を通し、インドにおけるビーガンフードサービス提供者の動機、ビーガン消費傾向、課題、ビーガン消費の将来についての視点を探ることを目的とする。
ビーガン消費者市場は、経済的重要性により食品加工業界事業者にとって魅力的なセグメントである。依然規模は小さいものの、多くの人が動物性食品を含まない製品を消費する方向に移行しており、広範囲にわたるメディア報道、汚染に対する消費者の意識、食肉生産に伴う環境問題、環境災害が社会に与える影響、倫理的懸念、動物虐待、社会的背景、文化運動の高まりなどがビーガンフード消費の要因である。動物由来食品消費量が減少し、地球温暖化を引き起こす温室効果ガス排出削減に寄与し、持続可能な開発目標の達成にも必要だと考えられている。
インドでは菜食主義が主流だと知られているが、ビーガン運動は過剰な畜産による環境破壊が世界的に懸念された21世紀になって初めて始まったと考えられ、マーケティング担当者には有利な機会を提供すると期待されている。世界のビーガン市場規模は2028年に613億5,000万米ドルに達し、インドでは2030年までに333億米ドルに達すると予想。インドは人口の9パーセントがビーガンと認識され、ノンミートイーターの割合が世界で最も多い。Tier2都市とTier3都市 での消費者のビーガンや健康とウェルビーイングへの関心の高まりが、インドでのビーガンフードサービスの需要を進めると認識される。
文化を越えて肉は不可欠な供給源であり、肉の消費の正当化が自然、必要、正常、充実感があると考えている。特にレストランやビジネスミーティングでのフォーマルな食事により適していると受け入れられ、家族の集まりなど非公式な場でも肉の方が受け入れられやすい。ビーガンやベジタリアンの食事は高価で、楽しくなく、不適切、不便、調理や準備が難しいと考えられ、消費者が健康と環境上の利点をより認識している場合でも、ビーガンや植物由来の食事の導入を拒む。新しくて馴染みのない食品や植物由来代替品などの食品への抵抗感が障壁となっている。消費者の健康的な食生活を推進するには、サプライチェーンとバリューチェーンが繋がった商業食品システムが重要であり、特にニッチな食品市場に向けたステークホルダー間の連携が不可欠だ。
インドのビーガンフード市場は2022年から2030年にかけて8.1%のCAGRで成長すると推定。ビーガンフードサービス提供者の視点や課題への理解、これらに対処する懸念事項は、ビーガンだけでなく、健康的で環境に優しく持続可能な代替食品も含め、成長と発展に重要である。インドでのビーガン消費者の動機や視点の分析を試みた研究はいくつかあるが、ビーガンフード供給業者が直面する視点や課題を理解できる研究はまだない。食料システムを発展させ、実行可能かつ持続可能にするには、研究は供給側と需要側の両者からの課題対処に焦点を当てる必要がある。ビーガンフード消費増加を維持におけるフードサービス提供者の重要性と役割を考慮し、インドのビーガンフード市場の課題、機会、将来像についてビーガンフードレストラン経営者の視点の分析を目的に以下の研究疑問を提示した:
Q1 サービス提供者がビーガンフードレストランを運営する動機は?
Q2 ビーガンフード消費傾向、食べ物の好み、ビーガンフード消費の変化、インドでビーガンフードレストランを運営する際の課題に対する見解は?
Q3 ビーガンフードサービス提供者は課題にどのように対処しているか?
Q4 ビーガンフードサービス提供者は、インドにおけるビーガンフードサービスの将来の需要をどのように予想しているか?
ビーガンフードサービス提供者65社にアプローチし、調査参加に同意したのは13社。国内のさまざまな地域から参加者にアクセスする困難を踏まえデータ収集に電話インタビューを採用。1店舗あたり平均座席数は30席。研究ユニットの中で最も古いビーガンレストランは2012年に設立。ほぼ全ての参加者がビーガン料理とベジタリアン料理を組み合わせ、純粋なビーガン料理を提供するのは3社。メニューには西洋料理、タイ料理や中華料理を含む料理が大半を占め、次に世界各国の料理とインド料理を組み合わせた「グローバル」と表示された料理である。ビーガン消費者のほとんどが若者であり、西洋ライフスタイル、有名人や動物への配慮に対するソーシャルメディアの影響を受けている。
現在の研究では、健康とウェルビーイングに対する関心がビーガン採用の動機に影響すると考えら、研究参加者全員がビーガンフードの需要に楽観的である。様々な課題があり普及は遅いが10 年以内にニッチ市場からマス市場に移行すると予想。ビーガンメニューのローカライズ化そして継続的な革新が不可欠だろう。
Namratha Pai Kotebagilu, Shreya Bhatia, Senthilkumaran Piramanayagam
2023/12/01
A qualitative investigation on Indian vegan food service providers' perspective of trends, challenges and the future of vegan consumption