論文概要
健康的な食生活にはコベネフィットがあることが知られており、環境への影響を軽減し、同じ農業資源でより多くの人口を養うことができる。EAT-Lancet 健康基準食*を採用した場合、人間の健康と生態系に複合的な利益があるが、EAT-Lancet食のために必要な条件を世界全体でどの程度まで持続的に満たすことができるかは不明である。
ここでは、農業水理に関する空間分布モデルに線形最適化分析を組み合わせて世界の耕作地を再配置し、国単位での灌漑水の消費を最小化し、同時に世界全体でEAT-Lancetの栄養目標の達成を推進できるようにする。そのため、食生活に関して作成した6つのシナリオでは、宗教的な伝統が関係する各国固有の食習慣および既存の畜産システムに基づきながら、現状の輸出入に関する農業貿易のパターンを維持するものとした。
その結果、世界における耕作地の割り当てを最適化し、貿易フローを調整することで、EAT-Lancet食を世界全体に供給すると同時に、世界の耕作地面積を37~40%削減し、灌漑用水消費量を78%(±3%)、非持続的灌漑面積を22%削減できることが示唆された。EAT-Lancet食を採用した場合の世界の食料生産に占める食料貿易の割合をキロカロリーで測定すると、ベースラインの25%から36%(±2%)に増加する。
* プラネタリーヘルスダイエットとも呼ばれ、果物や野菜など加工度の低い植物性食品の摂取を重視し、魚や肉、乳製品の摂取は控えめにする食事法。
Maria Cristina Rulli, Martina Sardo, Livia Ricciardi, Camilla Govoni, Nikolas Galli, Davide Danilo Chiarelli, Adam M. Komarek & Paolo D’Odorico
2024/11/01
Meeting the EAT-Lancet ‘healthy’ diet target while protecting land and water resources