オーストラリアとドイツにおける食肉行動の調査:行動のコントロールと動物への共感の役割

アニマルウェルフェアや肉食に関連する健康・環境問題への懸念にもかかわらず、肉の消費量はオーストラリアを含め、世界中で増加し続けてきた。ドイツはその例外の1つで、2021年における食肉消費量は過去30年間で最低であった。 …

人間を動物の上におくこと – 肉食行動における性差とダークトライアド

これまでの実証的研究によれば、肉食に対する態度や実際の肉食行動には性差があることがわかっている。いくつかの研究ではさらに、(心理学における)ダークトライアドを構成する3つのパーソナリティ特性(マキャベリズム・ナルシシズム…

菜食主義に対するイデオロギー的抵抗には、アイデンティティに基づく動機がある

動物に由来する製品を使った食生活は、人間の健康や環境、アニマルウェルフェアに及ぼす影響の大きさから、欧米諸国においては持続不可能なものと見なされるようになってきている。よりプラントベースの食生活への移行を促進することは、…

魚類における嗜好・回避・動機、アニマルウェルフェアの観点からみたその重要性

これまでの研究によれば、魚類には恐怖・痛み・喜びなど、いくつかの情動を経験する神経生理学的および行動学的メカニズムが備わっていることが報告されている。このことは、当事者の主観的な感覚を根拠とするウェルフェアを考えるうえで…

種差別と汎化する偏見、偏見を抱く人々に対する認識

哲学者らの議論によれば、我々の動物に対する態度(「種差別」)は規範的な価値観によって他の様々な偏見と繋がっているとされる。心理学研究ではまた、種差別の基底には他の偏見におけるのと同様の心理過程や動機が働いていることが示唆…

心理学的構成概念としての人間中心主義、その構造と相関

環境保護をめぐる議論では、環境倫理における人間中心主義的な立場と環境生物中心主義的な立場からの主張が衝突している。野生生物の保護を主張する立場からは、人間中心主義は生態系危機の主因であるとして批判されているが、心理学的構…

動物たちの道徳的地位: 種差別の心理学に向けて

本稿では、哲学的概念である「種差別」―種に属するか否かによって異なる道徳的価値を付与すること―を心理学的構成概念として導入し、検討する。ネット上の一般人口集団および大学生をサンプルとして用いた5つの研究において、種差別は…

肉食忌避に対する態度のイデオロギー的基盤: 文化・経済の現状に対する脅威としての菜食主義

政治的に右派の人々は、左派の人々に比べて、肉の消費と動物の搾取により大きく関わっている。先行研究によれば、これは彼らが菜食主義を国の食習慣や経済を脅かすものと見なしているからだという。2つの研究を通して、この「菜食主義の…

動物の苦しみに対する消費者の意識

地球と人類の健康は、欧米人が肉の消費を減らすことができるかどうかにかかっている。食肉生産は環境を悪化させ、食肉の過剰な摂取はガンや心血管疾患などとも関連しているが、消費者が食生活を変えるためは、説得力のある理由と動機が必…

畜産動物を中心とした視点から見たアニマルウェルフェア

このレビューの目的は、高い生産性を得るために畜産動物の身体に人工的に導入された解剖学的・生理学的変化など、動物の視点からはほとんど取り上げられることのない福祉の諸側面について啓発することである。このため本稿では、生産性の…

ヴィーガン料理を不味いと思うとき: 象徴的脅威としてのヴィーガニズム

肉を食べる人は概してヴィーガン料理は不味いと思っている。我々は、ヴィーガニズムが象徴的な脅威として認識されるためにこうした見方が生まれてくる可能性があると推測した。つまり、ヴィーガン料理を低く評価することで、肉を食べる人…

肉・魚・乳製品・卵の消費についての道徳感、正当化する信念:食事スタイルによる比較研究

肉を食べる人と食べることをやめた人では、性別の違いとともに、肉食に関する信念や道徳感が異なる。これまでにペスカタリアンとヴィーガンにおける信念と道徳感を調査した研究は乏しく、乳製品・卵・魚に関する道徳感や信念の違い、食事…

ヴィーガニズムに対する社会的・心理的な障壁を特定し克服する

本稿では、エシカル・ヴィーガニズムへと至る道程を、行動変容ステージモデル(無関心期から関心期・準備期・実行期・維持期まで)に基づいて概念化する。それぞれのステージにおいて、ヴィーガニズムへの前進を阻む心理的障壁を探り、こ…

ヴィーガンの道徳的なステレオタイプ化:食事の動機と活動家ステータスの役割

ヴィーガンに対して人々が抱く感情には相反するものがあり、ヴィーガンの道徳的な目的やコミットメントが賞賛される一方で、傲慢にみえるヴィーガンの態度や過剰なコミットメントが軽蔑されることもある。健康やアニマルウェルフェア、持…

アルゼンチン・チリ・コロンビア・エクアドル・ペルー・ボリビアの消費者における、畜産動物のアニマルウェルフェアに対する意識

畜産動物のアニマルウェルフェア(farm animal welfare, FAW)に対する消費者の態度は一面的な現象ではなく、民族性・農産物文化・倫理観、購買力・信条に関わるさまざまな考え方や社会的な側面を伴っている。そ…

非・種差別的な話し方で動物への道徳的コミットメントが伝わると、善意の人に対する軽蔑感(Do-gooder derogation)が誘発される

人間以外の動物を「何か」ではなく「誰か」と呼ぶなど、非・種差別的な言葉を使うことは、動物に道徳的な地位を認める簡単な方法である。しかし、このような言い方がどう受け止められるのか、また、これがこうした善意に対する軽蔑感とど…

動物の法的権利について一般市民の認識を探る

人間以外の動物の法的地位のあり方に関して、法学者・哲学者・動物科学者・社会科学者・人道主義活動家らによって活発な議論が行われてきた。しかし、動物の権利のために提案された枠組みについて、その利点や欠点をどう考えるのかなど、…

チーズのパラドックス:ベジタリアンは肉以外の動物性食品の消費をどう正当化する?

「肉のパラドックス」は、人々が動物に対して抱く親近感と、その肉を食べたいという欲求との葛藤から生じる心理的不快感を指し、動物倫理に関心を持つ研究者によって提唱されてきた。しかし、肉以外の動物性食品を消費する心理はどのよう…

肉に対する精肉店・デリカテッセン従業員の心理的適応

食肉生産の初期段階において、肉はもとの動物の姿に近い状態であるが、多くの現代社会において一般消費者はこのようなプロセスから遠ざけられている。本研究では、食肉の取り扱いを繰り返すことによる感情および心理面での影響を調べた。…

中国の大学生におけるアニマルウェルフェアの捉え方

動物に対する利害関係者の姿勢を理解することは、アニマルウェルフェアの発展と改善にとって極めて重要である。獣医学・動物学・生命科学を専攻する大学生は、将来的には重要な利害関係者として動物に関連する産業に従事する人々と関わる…