論文概要
オスの初生雛(ひよこ)は卵の生産における副産物として命を持って生まれてくるが、鶏卵業界ではこれを殺処分することになっており、商品としての卵の生産はこうした慣行によって成り立っている。研究では、遺伝子導入マーカー遺伝子を利用して、孵化時ではなく、産卵時に雄の胚を卵内で早期に鑑別する方法が模索されている。
バイオテクノロジーを用いたこの雌雄鑑別法によって殺処分という倫理面の重要な問題に対処し、食料システムの持続可能性を向上させることが可能となるが、本稿ではこの方法が社会で受け入れられるかどうかについて検証する。オーストラリアの代表サンプルを対象としたオンライン調査(1148名)を実施し、こうした技術の開発を支持するかどうか、またこの新たな方法で生産された卵を購入する意思があるかどうかについて、影響を及ぼす可能性のある心理的要因を測定した。
ほとんどの参加者は、遺伝子マーキング技術の開発を少なくとも中程度は支持する意向を示し、5人に1人は強い支持を表明した。参加者は、鶏の遺伝子マーキングが以下のような効果をもたらすことに、中程度から高い同意を示した: 1.採卵産業においてオスの雛を殺処分する慣行を減らす、あるいは廃止するのに役立つ(反応の有効性)、2.雌雄鑑別のために合成生物学を用いるこの新しいアプローチは、現在の方法で卵の生産過程でオスの雛を識別してから除去しているのに比べると、より優れている可能性がある(相対的優位性)。遺伝子マーキングによる方法で生産された卵を購入してもよいという意思は、卵を食べる参加者のほぼ60%において、中程度あるいはそれ以上に強いものであることがわかった。
このアプローチを支持する意思と卵を購入する意思に関する部分媒介パスモデル(R2=0.78)によると、意思決定に関与する重要な要因は、反応の有効性と相対的優位性に加えて、技術に対する捉え方(その技術が良いか悪いか、安全か危険か、倫理的か非倫理的か)と感情的反応であった。
これらの結果から、消費者は主に新しい遺伝子マーキングによる方法に価値がありそうかどうかに基づいて意思決定と行動選択を行っており、新しい方法にはより高いレベルのアニマルウェルフェア、持続可能性の向上、廃棄物の削減など、さまざまな利点があるために殺処分による現在の方法よりも優れているかどうかを考慮していると考えられる。
Aditi Mankad, Elizabeth V. Hobman,Elizabeth V. Hobman, Lucy Carter,Lucy Carter, Mark TizardMark Tizard
2022/07/04
Ethical Eggs: Can Synthetic Biology Disrupt the Global Egg Production Industry?