論文概要
本稿では、エシカル・ヴィーガニズムへと至る道程を、行動変容ステージモデル(無関心期から関心期・準備期・実行期・維持期まで)に基づいて概念化する。それぞれのステージにおいて、ヴィーガニズムへの前進を阻む心理的障壁を探り、こうした障壁がどのように現れるかを議論し、これを克服する方策について探求していく。本稿は、動物の福祉や権利を守ろうとする人々のために、行動変容の段階を見定め、ヴィーガニズムへの変容において直面する可能性のある社会的・心理的障壁を理解し、克服するうえで指針となることを目指すものである。
多くの人々は畜産における残酷な実態について知ることもない一方、意図的にこの問題について考えることを避け、この問題の規模の大きさを理解することができないまま、単純に現状を肯定する傾向にある。畜産動物の苦しみについて考えるとき、肉を食べる人々は強い認知的不協和*1を感じるが、このような不協和の感覚は自分自身や社会についてのイメージを守ることを動機とした理屈となって現れる。こうした行動はまた、確証バイアス*2や、肉を食べる視聴者の好みに迎合するメディアの加担によって促進される。いったんはヴィーガニズムを選ぶことを決意するとしても、習慣と意志の問題によって、その信念に基づいた行動はさらに阻まれることになる。
これらはすべて、種差別的かつ肉食主義的*3な文化の現状なのであり、肉を食べることは自然であり、畜産は尊いことであり、ヴィーガンは「他者」なのである。我々は、これらのバイアスを行動変容ステージモデルの各段階の中に位置づけて明らかにし、動物を守ろうとする人々や今後の研究に与える意義について議論する。
*1人が自身の認知とは別の矛盾する認知を抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す社会心理学の用語。*2仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと *3 人類と他の動物との関係を論じる際に用いられる概念(carnism)で、動物製品の利用と消費、特に食肉の消費を支持する支配的なイデオロギーを指す(Wikipedia より抜粋)
Christopher J. Bryant, Annayah M.B. Prosser, Julie Barnett
2021/11/26
Going veggie: Identifying and overcoming the social and psychological barriers to veganism