論文概要
中国の養鶏業は、ケージフリーの生産システムを導入と維持に向けてさまざまな課題に直面している。ケージから代替システムへ移行する生産者、あるいはケージフリーシステムを維持している生産者を支援し、アニマルウェルフェアを向上させるためには、効果的な介入策が不可欠である。しかし、中国の養鶏業者がケージフリーシステムに関してアニマルウェルフェア、また養鶏におけるアニマルウェルフェアの重要性についてどのように認識しているのかほとんど知られていない。
本稿では、中国においてケージ飼育およびケージフリー飼育を行っている大規模な鶏卵農場・ブロイラー農場の生産者30名(経営者・管理者・上級管理者を含む)を対象とした質的インタビュー調査により、アニマルウェルフェアに関する生産者の認識と態度を探るとともに、異なる生産システムのもとでのアニマルウェルフェアの状況を明らかにする。半構造化インタビューで得られたデータにテンプレート分析を用いて、アニマルウェルフェアの概念についての参加者の認識と理解、異なる飼育システムの選択に影響を与えた要因、生産において重視している事項を特定した。
その結果、参加した生産者はアニマルウェルフェアについて強く認識しており、知識を持っていることが明らかになった。しかし、アニマルウェルフェアの概念についての理解は一様とはいえず、全般的に鶏卵の生産者は鶏の行動が自然であることを重視しており、ブロイラー生産者は鶏の健康と生産性を優先していた。とはいえ、収益性・リーダーシップ・組織の経営方針が影響していたのは、アニマルウェルフェアの価値観というよりは主に飼育システムの選択であった。
経済面からの動機が鶏卵生産者をケージフリー方式へと向かわせていたが、これは2025年までにケージからの脱却を目指す消費者や企業からのケージフリー卵に対する需要に促されたものである。結論として、介入においては国内の養鶏業のさまざまな部門に合わせた施策が必要である。アニマルウェルフェアの価値観は重要であるが、ケージフリー飼育への移行とその維持を進めるためには、経済的インセンティブがより有望であると思われる。
Qing Yang, Cathy M. Dwyer, Belinda Vigors, Ruqian Zhao, Fritha M. Langford
2024/07/19
Animal welfare with Chinese characteristics: Chinese poultry producers’ perceptions of, and attitudes towards, animal welfare