論文概要
本研究の目的は、感情転移に関する仮説― 動物に優しい態度を奨励することでヒトと他の生物種の両方に対する共感が高まる― を検証することである。我々は横断的調査において、人間への共感、動物への共感、動物に優しい態度の3要素に関して相互の関係を調べた。主に西洋諸国で行われた先行研究と比較するため、中国の成人669人をサンプルとして、動物態度尺度*1(Animal Attitude Scale)、基本共感尺度*2(Basic Empathy Scale)、動物共感尺度*3(Animal Empathy Scale)への回答を求めた。参加者はまた、自分自身についての社会人口統計学的データ(年齢・性別など)およびコンパニオンアニマルに触れる頻度や質について回答した。
結果として、以下のことが明らかになった:(a) 女性は男性に比べ、ヒトや他の動物への共感性が有意に高く、動物に対してより肯定的な態度を示した、(b) コンパニオンアニマルとの接触の頻度や質が高くなると、ヒトと動物への共感、および動物への肯定的な態度も強くなった、(c) 高齢の参加者は若年の参加者よりもヒトへの共感性が高かったのに対し、若年の参加者は高齢の参加者よりも動物への共感性が高かった、(d) 動物に対する共感性は、動物に対する態度とヒトへの共感の相関関係を媒介していた。
この研究結果は、生物種を超えた共感の繋がりについての従来の研究を拡張するとともに、動物への思いやりある教育的介入を通じて共感や利他的行動を育成する教育の実践を支持するものである。
*1 動物に対する態度全般を測定する29項目の評価尺度 *2恐怖・悲しみ・怒り・喜びに対する共感性を測る20項目の評価尺度 *3動物に対する共感的な感情反応の強さを測定する22項目の評価尺度
Xuan Gu, Ling Xie, Sarah M. Bexell
2023/10/23
The link between attitudes toward animals and empathy with humans in China: Mediation of empathy with animals