論文概要
気候変動に対応して温室効果ガス排出量を削減することは、世界的に重要な課題となっている。動物に由来する製品は温室効果ガス排出の大きな原因の一つであり、この問題についてさらに詳しい検証が進められている。一方、動物性材料を使わない乳製品にはこの意味で可能性があり、消費者がこうした製品を受け入れるかどうかを理解することが極めて重要となるが、このテーマに関する研究は乏しい。
本研究では動物性材料を使わない乳製品に関する認識と受容度を検証するため、オンライン調査においてドイツの消費者 1,487名に5種類の異なる情報を提供した(動物性材料不使用のチーズ・遺伝子組み換え生物・アニマルウェルフェア・環境への配慮・農家の存在について、一般的な情報およびトピックに関連した情報)。 動物性材料を使わない乳製品に対する受容度を測定するために、動物性材料不使用のチーズに関して、回答者の「試したい」「代替したい」「購入したい」「定期的に購入したい」という意欲の強さを調べた。
その結果、受容度は過去の研究に比べると比較的低かったものの、消費者の45.65%に受け入れられていることがわかった。重要な点として、動物性材料不使用のチーズに対する消費者の考え方には大きなばらつきがあり、そのために消費者が示した意欲には不規則な分布が見られたことである。部分最小二乗構造方程式モデリングによるグループ間比較では、消費者の受容度には5種類の情報グループの間で有意差は見られなかった。
しかし、個別のグループに関する分析では、動物性材料不使用のチーズに対する購入意欲は、便益に関する認識と持続可能性に関する認識が高まると向上することがわかった。逆に、(製品に関する)リスクが強く認識されているほど、購買意欲は低下した。こうしたリスクに対する認識は、農業に対して肯定的な態度や知識があるほど強まり、農業への社会的な信頼感が大きくなると低下していた。アニマルウェルフェアに関する考え方と社会的信頼感は、便益に関する認識にプラスの影響を与えていた。
これらの結果は、動物性材料を使用しない乳製品に対するドイツ消費者の受容についての知見を提供し、生産者や政策立案者がこうした製品を市場に導入する戦略を推進するうえで有用である。
Hanno Kossmann, Holger Schulze, Marcus Mergenthaler, Peter Breunig
2023/09/09
Acceptance of animal-free cheese products: Evidence from an information experiment in Germany