論文概要
中石器時代にヨーロッパにおいて水産資源の利用が増加したことを示す考古学的知見は広く存在する。これとは対照的に、その後の新石器時代には農耕と土地所有、これに伴う定住化が広がったために、ヨーロッパの最沿岸地域においても食材としての水産資源の重要さは薄れ、飢餓における非常食になったり、完全に放棄されたりするようになった。
ここでは、加熱熱脱離および熱分解ガスクロマトグラフを用いて、ヒトの歯石から抽出されたバイオマーカーを調べ、ヨーロッパ全域で海藻、水中植物・淡水植物が広く食材として摂取されていたことを直接に示す研究結果を報告する。
特に注目すべきは、これらの水産資源が消費されていたことを示す形跡が、新石器時代における農耕への移行期から中世初期(紀元5・6世紀まで)にまで及んでいることである。このことは、これらの水産資源は、現在のヨーロッパではほとんど食用に供されていないが、重要な食材でなくなったのはごく最近であることを示唆している。
古代の食材を理解することは、過去を復元する上で極めて重要であり、それと同時に地域で忘れ去られた資源についての知識を深めることは現代においても同様に重要である。
Stephen Buckley, Karen Hardy, Fredrik Hallgren, Lucy Kubiak-Martens, Žydrūnė Miliauskienė, Alison Sheridan, Iwona Sobkowiak-Tabaka, Maria Eulalia Subirà
2023/10/17
Human consumption of seaweed and freshwater aquatic plants in ancient Europe