論文概要
背景: 不健康な食生活と非伝染性疾患の増加、プラネタリーヘルス(地球の健康)の悪化は、互いに密接に絡み合っており、その中で食料の生産・消費は、温室効果ガス排出量の増加、膨大な土地利用、がんの発生や死亡を含む健康への悪影響を引き起こす主要な原因となっている。本研究では、より持続可能な食生活への移行がもたらすコベネフィット(共通便益)の可能性を評価するため、食生活に関係する温室効果ガス排出量と土地利用が、全死亡率および原因別死亡率、がんの発生率とどのように関連しているかを調査した。
方法: 多施設間の前向きコホートである「がんと栄養に関する欧州前向き調査 European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition」に登録された参加者443,991人のデータを用いて、食生活による温室効果ガス排出・土地利用への影響と、全死亡率・原因別死亡率・がん発生率の関連について、コックス比例ハザード回帰モデルを用いて推定した。主な要因は四分位値としてモデル化した。反事実的な介入シナリオのモデルにおける各要因の寄与割合から、食生活をEAT-Lancet 基準食*へ転換した場合の潜在的効果をシミュレートし、全死因死亡とがんに対する潜在的効果、および温室効果ガス排出と土地利用における潜在的削減量をコベネフィットとして推定した。
結果: プール解析において第4四分位群と第1四分位群を比較すると、食生活に起因する温室効果ガス排出と全死因死亡率の間には相関があり(調整ハザード比[HR]1.13[95%CI 1.10-1.16])、土地利用と全死因死亡率にも相関が見られた(1.18[1.15-1.21])。原因別死亡率に関しても同様の相関が観察された。第4四分位群と第1四分位群を比較した場合、がんの総発生率と温室効果ガス排出量には相関があり(調整HR 1.11 [95% CI 1.09-1.14])、がんの総発生率と土地利用にも相関が見られたが(1.13 [1.10-1.15])、その推定値はがんの種類によって異なっていた。
EAT-Lancet 食の遵守度レベルが転換する場合の介入シナリオに関するモデリングからは、リスク推定を20年間とした場合、EAT-Lancet 食への遵守度が変わることにより、死亡数については19-63%、がんの罹患率については10-39%まで防ぐことができると推定された。さらに、EAT-Lancet基準食への遵守度が低いレベルから高いレベルに転換する場合、食料に関連した温室効果ガス排出量と土地利用をそれぞれ50%と62%まで削減できると推定された。
解釈: 本研究の結果は、普遍的に持続可能な食生活への転換が様々なコベネフィットをもたらすことをことを示しており、これによって食生活に関連する温室効果ガス排出と土地利用を最小化するとともに、環境フットプリントを削減し、気候変動の緩和に寄与し、さらに人々の健康を増進できる可能性がある。
* プラネタリーヘルスダイエットとも呼ばれ、果物や野菜など加工度の低い植物性食品の摂取を重視し、魚や肉、乳製品の摂取は控えめにする食事法。
Jessica E Laine, Inge Huybrechts, Marc J Gunter, Pietro Ferrari, Elisabete Weiderpass, Kostas Tsilidi, Dagfinn Aune, Matthias B Schulze, Manuela Bergmann, Elisabeth H M Temme, Jolanda M A Boer, Claudia Agnoli, Ulrika Ericson, Anna Stubbendorff, Daniel B Ibsen, Christina Catherine Dahm, Mélanie Deschasaux, Mathilde Touvier, Emmanuelle Kesse-Guyot, Maria-Jose Sánchez Pérez, Miguel Rodríguez Barranco, Tammy Y N Tong, Keren Papier, Anika Knuppel , Marie-Christine Boutron-Ruault, Francesca Mancini, Gianluca Severi, Bernard Srour, Tilman Kühn, Giovanna Masala, Antonio Agudo, Guri Skeie, Charlotta Rylander , Torkjel M Sandanger, Elio Riboli, Paolo Vineis
2021/10/22
Co-benefits from sustainable dietary shifts for population and environmental health an assessment from a large European cohort study.