論文概要
健康的で持続可能な食生活には、食事の摂取内容や環境資源の利用をより良いものへと向上させる力がある。しかし、食品の選択を改善するための指針にもとづいて長期的な行動変容を促すためには、健康・環境の持続可能性・食事コストなど、多くの次元にわたって行動変容が及ぼす効果を考慮する必要がある。本研究では、食生活に小規模の変化を選択的に導入した場合に、従来の食生活と比べて持続可能性においてどのような違いがあるのかを検証した。
12項目のサステナブルアクション(= 持続可能な行動や取り組み)を想定し、これらの行動が及ぼす潜在的影響について、食餌マーカー(タンパク質・飽和脂肪・糖質・塩分・鉄分・カルシウム)・環境フットプリント(温室効果ガス排出量・淡水取水量・土地使用量)・食事にかかるコストの面から検証した。従来の食生活に関するデータとしては、全国食事栄養調査 UK National Diet and Nutrition Survey(2017-2019)に参加した1235名(19~94歳)からの食事内容に関するデータを用いた。(12項目の)サステナブルアクションのそれぞれについて、必要な変更を導入した場合における、変更前の食事との違いを調べた。
その結果、11項目のサステナブルアクションにおいて、食事マーカーと環境特性の面での便益があることが明らかになったが、その効果の大きさはアクションの項目によって異なっていた(範囲: F(1,728) = 5.80, p < 0.001 から F(1,506) = 435.04, p < 0.001)。食餌・環境・コストに関するアウトカムすべてにおいて最も効果が大きいアクションは、肉の消費を減らす、あるいは肉を豆類や卵に置き換えることであった。それ以外のサステナブルアクションについては、一部のアウトカムが改善されるか、またはアウトカム全般がある程度まで改善される傾向があった。
これらの結果は、食生活・環境・コストのアウトカムに対して、多くの小さな持続可能な食行動が及ぼす影響を実証し、行動の選択において便益の観点から見た優先順位を明らかにするものである。本研究の結果はまた、食行動を通じた健康の向上を促進すると同時に、環境フットプリントに関する英国の目標に向けて有益な知見を提供する。
Danielle J. Guy, Jeffery Bray, Katherine M. Appleton
2023/12/27
Select dietary changes towards sustainability: Impacts on dietary profiles, environmental footprint, and cost