論文概要
世界ではうち続く栄養不良に加え、人口のさらなる急増により、タンパク質の供給不足が差し迫った問題となっている。しかし、従来の牛・鶏・豚などの畜産によるタンパク質生産を大幅に拡大することは、スペースの制約や森林破壊などの環境コストの問題から困難である。
その結果、昆虫やその他の無脊椎動物など、より少ないスペースと資源で済む代替タンパク源が求められている。新熱帯区* では、昆虫食が広く普及し、アニマルウェルフェアの規制が整いつつあることから、この問題に関して注目すべき重要な地域である。しかし、脊椎動物の畜産動物とは異なり、「ミニ畜産動物」としての昆虫は一般に現行のアニマルウェルフェア規制では保護されていない。しかし、その一方では、昆虫が「個性」を持ち、感情に類似した情動状態を経験し、痛みのようなものを感じているかもしれないという知見は増えつつある。
本稿ではこうした矛盾に論点をしぼり、このテーマに関連した新たな研究の概要を説明するとともに、今後の研究分野を明らかにする。昆虫の養殖は世界中で盛んになりつつあるが、実証研究や倫理に関する多くの問題について早急に取り組む必要がある。最後に、昆虫のウェルフェアに関する規制を導入した場合の便益と潜在的なコストについて述べる。
* 生物地理区の一区分で、南米大陸および中米のエリア(Wikipedia より抜粋)。
Tina Klobučar, David N. Fisher
2023/01/19
When Do We Start Caring About Insect Welfare?
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