論文概要
食品とアイデンティティの関係は、これまでの環境研究ではあまり検証されてこなかった。人々が食品に価値を見出すのは、物質的・具体的な便益のためだけではなく、それが自分自身やコミュニティの他のメンバーにとって象徴的なものであるからである。
本研究では、食行動と人々のアイデンティティの関わりにはどのような意味があるかを特定し、より持続可能な方法で生産された食品を消費者が選択しようとする際に、伝統的な食品生産の存在がどのように影響しているかを調べることを目的とした。全体の目的は、アイデンティティと強く結びついた食行動が食品の選択に与える影響や、持続可能な消費のために新しい食品を普及させることについて理解を深めることである。
研究では、イタリアで実施したアンケート調査396件の分析から、食品の選択に関わる価値観のうち主なものを選択し、アイデンティティとの関係を検証し、持続可能性に関する考え方への影響を調査した。
その結果、食品には大きな象徴的価値があることが明らかになった。食品は伝統や歴史と密接に結びついており、持続可能な生産方法を実践することで伝統的な食品生産が損なわれる可能性がある場合、消費者は製品を変えることに消極的になると考えられる。
食品消費における根強い伝統を変えるには、食品の選択において新たなオートマティズムを生み出すなど、 質的に新しい意識を広めていくことが必要である。本稿で得られた結果は、政策立案者の戦略において、日常の生活が環境に及ぼす影響を人々に意識させる取り組みを支援し、社会通念に基づいたアプローチによってライフスタイルを必要な方向へと誘導するうえで有益であると思われる。
Mariarosaria Simeone & Fabio Verneau
2024/01/27
In support of framing Food Identity towards pro-environmental food choices through empirical evidence