論文概要
動物に対する不適切な扱い、搾取や虐待は、社会でよく見られる問題であり、種差別に関連している。種差別とは、生物種によってさまざまな生き物に人間が異なる価値を付与することを指している。動物に危害を加える行動を減らすために保護活動家が用いる方法の一つに、動物と人間の立場を逆転させて危害や虐待の状況を描き、イラストとして人々に見せることがある*。しかし、種差別的な態度や行動を減らすうえでこの介入策が有効かどうかは不明である。
こうした介入策には動物の扱いに関する認識や視点の取り方、不正に対する感情を高める可能性があり、本研究では、対照条件に比べて種差別を減少させる効果があるものと予想した。研究1(231名)および研究2(399名)では、人間が動物の立場になる状況、または動物が人間の立場になる状況を描いたイラストを介入条件の参加者に提示し、対照条件の参加者にはこれを提示しなかった。続いて、種差別的な考え方、行動意図および行動反応について測定を行った。
研究1・2では、介入条件の参加者は、対照条件の参加者に比べて、動物に対して直接・間接に有害となる行動を減らす意思を強く持っていることがわかった。このような効果は、不正に対する感情に基づくものであった(研究2)。種差別的な考え方や行動反応には効果がみられなかった。
介入によって人々が行動を変える意思を示したことから、この介入策には効果があることが明らかになった。介入によって意思には変化が見られた一方で、種差別的な考え方や行動反応には変化が見られなかった点に関してその原因を考察する。
* 研究で使われたイラストは公開されている(https://www.youtube.com/watch?v=0zzTaPutHww)
Nicole Banach, Mariëlle Stel
2024/05/09
Reducing Speciesism: An Intervention to Change People’s Attitudes and Behavioral Intentions