論文概要
肉を食べる人と食べることをやめた人では、性別の違いとともに、肉食に関する信念や道徳感が異なる。これまでにペスカタリアンとヴィーガンにおける信念と道徳感を調査した研究は乏しく、乳製品・卵・魚に関する道徳感や信念の違い、食事スタイルによる種差別的信念の違いについてはほとんどわかっていない。
この問題に取り組むために、何でも食べる雑食の人(167人)、ペスカタリアン(110人)、ベジタリアン(116人)、ヴィーガン(149人)の4つのグループを対象として、道徳感(消費に関連する嫌悪感と罪悪感)、動物に対する態度(動物態度尺度 Animal Attitudes Scale*1)、肉・乳製品・卵・魚の消費を正当化する信念(カーニズム調査票*2)について調査した。
その結果、動物に由来する食品を摂取する人々は、そうでない人々に比べて嫌悪感や罪悪感が低く、動物性食品の消費を正当化する強い信念を持っていた。人間の利益のために動物を利用することについては、すべてのグループの間で考え方に有意な差があり、動物を肯定的に捉える傾向は雑食の人で最も弱く、次いでペスカタリアンとベジタリアン、そしてヴィーガンが最も肯定的な態度を示した。動物性食品を消費するグループの中では、女性は男性よりも道徳感が強く、男性ほどには消費を正当化する信念を抱いていなかった。このような傾向は、消費する動物性食品(ペスカタリアンでは魚、ベジタリアンでは卵・乳製品)と関連があった。
これらの結果から、動物性食品を消費する心理的な背景を包括的に理解するためには、食品と食事スタイルについてより幅広く考慮に入れることが極めて重要である。本研究の結果は、動物に対する態度や道徳的関心が食事スタイルによって異なることを示しており、このことは動物性食品の消費を減らすための介入策を計画する際に考慮する必要があると考えられる。
*1ペット・食用動物・動物園など様々な状況における動物の扱いや、人間の道徳的優位性などについての個人の考え方を調べる簡易検査で、ここでは20項目の評価尺度を用いている。*2 肉食主義(カーニズム carnism)の信念を構成する2つの要素(防衛と支配)を測定するための質問票で、防衛は動物を食べることを正当化する傾向、支配は食べるために動物を殺すことを支持する傾向を指す
Maria Ioannidou, Valerie Lesk, Barbara Stewart-Knox, Kathryn B. Francis
2023/03/23
Moral emotions and justifying beliefs about meat, fish, dairy and egg consumption: A comparative study of dietary groups