論文概要
人間以外の動物を「何か」ではなく「誰か」と呼ぶなど、非・種差別的な言葉を使うことは、動物に道徳的な地位を認める簡単な方法である。しかし、このような言い方がどう受け止められるのか、また、これがこうした善意に対する軽蔑感とどうつながるのかどうかについては、知られていない。
イギリスの成人1409人を対象とした3つの研究において、雑食・セミベジタリアン・ラクトベジタリアン・オボベジタリアンの人々は、非・種差別的な言葉を使う人とあまり知り合いになりたがらないことがわかった。雑食の人々では特に懸念が強く、このような言葉を使う人々を思慮の足らない人だとも見ていた。厳格なベジタリアンとヴィーガンはより肯定的で、非・種差別的な言葉を使う人を思いやりのある人だと見ていた。特にベジタリアンはこの傾向が明瞭で、非・種差別的な言葉を使う人と知り合いたいと答えた唯一のグループであった。
食生活のスタイルに関わらず、すべてのグループで共通していたのは、非・種差別的な言葉が傲慢さや肉を避ける態度を表しており、人間が他の動物より道徳的に優先するという考えを拒絶している、という捉え方であった。これらの効果は、動物の苦しみを婉曲化しない表現(例.「処理する」ではなく「殺す」)で最も強く、動物をモノ扱いしない表現(例.「それ」ではなく「彼・彼女」)では最も弱かった。
我々の結果は、非・種差別的な言葉が持つ社会的意味を浮き彫りにし、それが日常生活において善意の人々への軽蔑感を引き起こす仕組みを明らかにした。動物に対して道徳的なコミットメントを持つ人々が、他の人々からどのように認識されるか、また、動物由来の製品の消費を減らし、アニマルウェルフェアの向上を願う人々が直面する課題とはなにか、本研究の結果はこうした問題を理解することに貢献する。
Stefan Leach, Kristof Dhont
2023/06/21
Non-Speciesist Language Conveys Moral Commitments to Animals and Evokes Do-Gooder Derogation