論文概要
ヴィーガニズムは、非倫理的で持続不可能な食料生産の慣行に対する批判として重要であるが、歴史的にヴィーガンの人々は主流メディアにおいて否定的に扱われてきた。近年ではヴィーガンのセレブリティが注目されているが、こうした人々による活動が文化的な媒介となることで、ヴィーガニズムの倫理的実践がより身近なものになる可能性はあるのだろうか? また、ヴィーガンの人々における本来の倫理的懸念は、動物を食料やその副産物として、搾取的な生産と消費において利用することに向けられたものだが、これはセレブリティの消費文化の文脈においてどのように再認識されているのだろうか?
本稿では、エシカル・ヴィーガニズムとエコ・フェミニズムの哲学と、エシカルな(食品)消費とセレブリティ文化に関する文献を総合しながら、ハリウッド俳優のアリシア・シルヴァーストーンとTVチャットショーの司会者エレン・デジェネレスによるヴィーガニズムに関する教育キャンペーン活動を分析する。
その結果、ヴィーガニズムは、人間・動物・環境に対する配慮や思いやり、優しさや感情といった倫理を重視した食習慣とライフスタイルとして理解されており、これはエシカル・ヴィーガニズムと一致することがわかった。しかし、こうした倫理観は、セレブリティ文化における商品の論理に従って、より市場に出やすく、消費しやすいものに作り替えられ、健康で幸せ、そして優しい自分になることを個人の選択において重視する価値観や(女性的に)ジェンダー化されたライフスタイルの実践へと変貌する。
生産における人間・動物・環境の関係が搾取的なものとなりジェンダー化される中で、エシカル・ヴィーガニズムは、これに対して消費段階において介入しようとするものである。ライフスタイルの個人化という政治的問題に注目が集まることを通じて、セレブリティが商品としての自己の地位を維持することとの間には隔たりがあるが、両者は互いに引き付けあい、セレブリティ・ヴィーガンの活動の中で結びつくのである。
Julie Doyle
2016/07/15
Celebrity vegans and the lifestyling of ethical consumption