論文概要
どのような視点に立つか、見方を変えることは、異なるグループ間の関係に良い影響をもたらすことがある。視点を変えることによるこのような効果が人間以外のグループ、特に動物や人工知性体にも広く一般化するかどうかはこれまで検討されていないことから、2つの実験でこの問題を検証した。
その結果、養豚場の豚の視点に立つ、または人工知性体の視点に立つ、そのいずれを採った場合でも道徳的態度に対して全体としては影響しておらず、客観的な視点に立つ場合や中立的な条件と比べて変わりがなかった。しかし、媒介分析では、どちらの実験においても、異なる視点に立つことは共感に基づく関心や自他を重ね合わせる見方を呼び起こし、これを通じて道徳的態度を高める方向に作用することが明らかになった。これは従来の研究でよく知られている2つの心理メカニズムを支持するものである。
このように動物や人工知性体の視点に立つ場合には、共感に基づく関心や自他の重ね合わせを介してプラスの効果があるが、一方で客観的な視点に立つ場合にも道徳的態度に対してプラスの効果がある。道徳的態度に対する効果が全体としては見られなかったのは、この両者の効果が相殺されたことに起因する可能性がある。
これらの結果は、視点を変えることが人間以外のグループとの関係に及ぼす影響は、人間のグループ間で通常見られるものとは異なった形で作用することを示唆しており、このことは今後の重要な研究課題となると思われる。
Ali Ladak, Matti Wilks, Jacy Reese Anthis
2023/06/01
Extending Perspective Taking to Nonhuman Animals and Artificial Entities