論文概要
動物の扱いに関する地域社会の意識を理解することは、動物虐待を防止するための介入プログラムを開発するうえで重要である。動物虐待の報告率および有病率は地域によって異なるが、本研究では、これらが地域社会における動物に対する意識の違いに反映されているかどうかを調査した。さらに、対象とする動物種(犬・猫・馬)および参加者の性別による意識の違いについても考慮した。
6つの地方行政区画において、代表的な人口サンプル1,801名を対象とした電話調査を実施した。意識に関するテーマとしては、動物に対する愛情・動物に対する価値観・自分で飼っている動物のケアに関する考え方・それ以外の動物の虐待に対する懸念について評価した。動物虐待について報告の多い地域と少ない地域、地域のタイプ(地方・中間地域・大都市部)、動物種(犬・猫・馬)による違いについて、要因分散分析を用いて検証した。
報告数の多い地域の回答者は、報告数の少ない地域の回答者に比べると、動物に対する愛情がわずかに強く、主観的規範が強いことがわかったが、他の変数に関しては地域による違いは見られなかった。地方では、大都市や中間地域に比べて虐待の蔓延率が高かったが、動物に対する愛情や虐待に対する関心が地方において全般的に低いわけではなく、動物を大切にする意識が低いわけでもなかった。
しかし、自分の動物のケアに関しては、行動に関する2項目および動物の管理についての2項目で地域差が見られた。さらに、動物種ごとに分析した場合、虐待に対する懸念の度合いについても地域の間には様々な違いが見られた。性別による影響も広く見られた。
以上の結果から、動物の扱いに関する意識は、確かに動物虐待の蔓延率と報告率に反映されているが、その一方で地域社会の意識が複雑であることも明らかになった。そのため、虐待を防止するための介入策においては、対象となる人々や行動、動物種に関してターゲットを明確に絞る必要がある。より小さな地域を対象とし、その地域に特有の考え方や課題、地域が持つ強みを十分に調査することは、一般的なキャンペーンよりも有効である可能性が高い。
Carmen Glanville, Jennifer Ford, Rebecca Cook, Grahame J Coleman
2021/10/28
Community Attitudes Reflect Reporting Rates and Prevalence of Animal Mistreatment