論文概要
背景: 人類と地球の健康をより良くするため、より持続可能な食生活へ早急に移行することが求められている。これを達成するための方法の一つは、持続可能な食習慣が主流になることである。本研究では、スウェーデンにおいて消費者・研究者・利害関係者がニッチなものと見てきた食習慣が、持続可能で将来性があると見直され、広く採用された場合に健康にどのような変化を及ぼすか、その潜在的影響を推定した。。
方法: 全国成人食事調査が最後に実施された2010-11年に新たな食習慣が採られたと仮定し、その後の20年間および30年間においてスウェーデン人口にどのように影響するか、早死によって失われた潜在的な余命年数 years of life lost (YLL) における変化を、生命表を用いて推定した。モデル化した食習慣は、赤身肉と加工肉を段階的に25%・50%・100%ずつ減らし、それぞれ同重量の鶏肉・魚と野菜・豆類に置き換えること、牛乳摂取量を25%・50%・100%ずつ減らすこと、砂糖入り飲料の摂取量を25%・50%・100%ずつ減らすことである。虚血性心疾患・脳梗塞・2型糖尿病・大腸がんについて、人口データに原因別死亡率、食習慣が疾患と関連する相対危険度のデータを連結し、各シナリオが個別に採用された場合、また複数のシナリオを組み合わせた場合の影響を推定した。
結果: 「中程度」のシナリオ(50%レベルの変化)の組み合わせで達成される効果は、早死損失年数 YLLの減少幅として20年間で513,200 YLL(不確実性推定の下限値および上限値 59,400 – 797,900)、30年間では1,148,500 YLL(135,900 – 1,786,600)であった。予防可能な早死損失年数の大部分(90%以上)は虚血性心疾患に関連したものであり、その多くは男性であった。食習慣のうちで唯一、最も大きな効果があったのは、赤肉と加工肉の摂取を減らし、野菜と豆類に置き換えることであった。牛乳の摂取を減らした場合にはYLLが増加したが、これは他のシナリオによって補うことができた。
結論: これらの食習慣がより広く採用されれば、スウェーデンにおいて公衆衛生の向上につながると予想される。長期的には、多くの慢性疾患による早死が先延ばしされる、あるいは予防されることになるため、個人や社会、気候や経済において便益をもたらすものと考えられる。
Emma Patterson , Patricia Eustachio Colombo, James Milner, Rosemary Green , Liselotte Schäfer Elinder
2021/07/06
Potential health impact of increasing adoption of sustainable dietary practices in Sweden