論文概要
目的: 肉の摂取がもたらす悪影響に関する情報があふれているにもかかわらず、多くの欧米諸国では推奨される摂取量の何倍もの食肉が消費されている。このような矛盾を説明する可能性の一つは、人々がそのような情報をあえて意識的に無視しているというもので、故意に知ろうとしない、意図的な無知(deliberate ignorance)と呼ばれる現象である。我々は、食肉消費を減らすことを目的とする情報介入におけるこの潜在的な障壁について調査した。
方法: 3つの研究では、計1133人の参加者が、肉の摂取がもたらす負の結果について18件の情報を見るか、もしくはその情報の一部を無視できるような状況に置かれた。意図的な無知は、無視した情報の件数として測定し、潜在的な予測因子と結果について検証した。意図的な無知を減らすための介入(自己肯定感*1・熟考・自己効力感*2)による効果を実験的に検証した。
結果: 参加者が情報を無視すればするほど、肉の消費量を減らそうという意思の変化は起こりにくくなった(r = -.124)。この効果は、提示された情報によって誘発された認知的不協和として部分的には説明できた。意図的な無知は、自己肯定や熟考についてのトレーニングでは減少しなかったが、自己効力感のトレーニングにおいては減少した。
結論: 意図的な無知は、肉消費の削減を目指す情報介入にとって潜在的な障壁であり、今後の介入や研究において考慮する必要がある。自己効力感のトレーニングは意図的な無知を弱めるためのアプローチとして有望であり、さらなる検討が求められる。
* 1 自分のあり方を肯定的に認め受け入れる感覚 *2 自分がある行動や課題を達成できるという自信・信念
Philipp Kadel, Ira E. Herwig, Jutta Mata
2023/03/01
Deliberate ignorance—a barrier for information interventions targeting reduced meat consumption?