論文概要
背景: 肉を食べることは、健康や環境に悪影響をもたらすとされてきた。これまでの研究では、肉を食べるのを減らすか、あるいは止めた人にどのような動機があるかについて調査されてきたが、習慣的に肉を食べる人に肉を減らすように促すにはどのような戦略が有効なのかはほとんどわかっていない。本稿では、肉の消費量を減らすことに関連のある要因について解説し、こうした要因に着目して行動や意欲を変化させることを狙った実験研究をレビューする。
方法: 4つのデータベースを用いて先行研究に関する系統的レビューを行った。選択基準は、実験研究またはそれに準じた研究であること、肉の消費量に関する変数を直接または間接に測定した研究であることとした。
結果: レビューの対象として特定された論文は22件である。これらの研究で検証された要因は、情報提供による健康や環境に関する知識・スキル、社会的支配志向性*と肉食の関係に関する価値観・態度、共感や嫌悪感などの感情に訴えること、社会規範の変化と高まり、ヴィーガン食をデフォルトのメニューにすることによる食環境の変化、行動の統制感、行動意図などであった。
多くの研究では情報提供が与える効果について検証しており(15件)、これには例えば肉の摂取が個人の健康に及ぼす影響に関する情報提供などがある。全体として、健康や環境に関する知識を増やす、あるいはこれを他の方法と組み合わせることが、肉を食べることやその意欲を減らすうえで効果があることがわかった。また、動物の画像を使って感情に訴えることや、食環境に変化を与えることも有効であった。
考察: 相関関係の検証から特定された要因は、行動変容を促す要因として実験研究でも概して有用であった。しかし、いくつかの要因に関しては実験的検証が行われていなかった。このレビューで得られた知見を確証するためにはさらなる実験研究が必要である。これには例えば、レストランのメニューで肉を使わない食事を増やすなど、食環境を改めることに焦点を当てた実験などが含まれる。
* 集団間の格差や序列を好む程度を表す概念
Jamie M. Harguess, Noe C. Crespo, Mee Yong Hong
2019/09/26
Strategies to reduce meat consumption: A systematic literature review of experimental studies